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面接解体新書第5弾|企業分析と志望動機

熱量は、結局論理から生まれる

志望動機に、熱意が乗らない。

「第一志望です」と口では言う。でも自分でも、どこか嘘くさいと感じている。気持ちが足りないのだろうかと思って、もっと強い言葉を探す。探しても、空回りする感覚だけが残る。

この記事の結論は、その努力の方向が違うということである。熱量は、感情の強度からは生まれない。論理から生まれる。


志望動機は「気持ちを伝える場」だという誤解

志望動機について、多くの就活生が疑いなく信じている前提がある。志望動機とは熱意を伝える場であり、熱意が強ければ強いほど評価される、という前提である。

この前提を置くと、対策は自然に熱意の増幅へ向かう。「御社が第一志望です」と断言する。「学生時代からずっと憧れていました」と語る。説明会に足を運んだ回数やOB訪問の人数を数え上げる。声を張り、身を乗り出し、目を見て話す。志望動機の文章から「強く」「心から」「どうしても」といった副詞を探しては、より強い語に置き換える。

私は、この方向の努力はほとんど評価に結びつかないと考えている。理由は単純で、感情の強度は面接官が組織に持ち帰れる形式ではないからである。

私が全通するようになってから確信したのは、志望動機で評価されているのは熱意そのものではなく、3点セットのうち③御社を辞めない理由を論理的に説明できているかどうか、という一点だった。そしてここが最も誤解されている部分だが——熱量は、結局論理から生まれる。熱意は感情の強度として伝わるのではない。推論の連鎖が破綻なく通っていることによって、事後的に熱量として認識される。

本稿はこの一文を分解するために書く。

なぜ志望動機が「辞めない理由」の担当になるのか

出発点は、採用が投資であるという事実だ。

企業は一人の新卒を採用するために、募集広告費、社員の面接工数、内定者フォロー、入社後の研修と、多額のコストを先に払っている。投資である以上、回収できなければ損失になる。そして回収条件は二つしかない。入社後に活躍すること、そして簡単には辞めないことである。どれだけ優秀でも二年で辞める人材は投資として失敗であり、どれだけ長く在籍しても成果を出さない人材も同じく失敗である。

この二つの回収条件が、選考のすべての評価軸の源泉になっている。3点セット——①御社の業務、②御社で活躍できる素養、③御社を辞めない理由——のうち、①と②は「活躍するか」に、③は「辞めないか」に対応している。ES・ガクチカ・自己PR・逆質問といったすべての要素は、この3点のいずれかを証明する手段として配置される。

その配置図の中で、志望動機に割り当てられているのが③である。理由は消去法で説明できる。ガクチカと自己PRは過去の経験を素材にする設問なので、②の証明に使うのが自然だ。これに対し志望動機は、選考の中で唯一、これから先の時間軸を扱う設問である。中長期的に自分がどこへ向かおうとしていて、その方向と会社の方向が一致しているか。この一致は志望動機でしか語る場所がない。

そしてもう一つ、より直接的な理由がある。面接官は面接終了後、人事部あるいは自部門に対して、学生の合否とその判断理由を報告している。私は現職で採用活動に携わっているため、この構造を内側から見ている。(他社の手続きの細部まで同一だとまでは断言できないが、面接官が単独で採用を決める企業は稀である以上、判断が言語化されて上位に渡ること自体は共通している。)

報告義務があるということは、面接官は「自分が好きかどうか」で合否を決めていないということだ。決めているのは「上司や人事に説明できる理由があるかどうか」である。そして、組織に対して説明できる形式は論理しかない。

「熱意がありました」は報告として成立しない。それを聞いた上司は必ず「どういう点で?」と問い返す。そこで面接官が答えに詰まれば、面接官自身の評価が下がる。だから面接官は、問い返されても答えられる材料を欲しがっている。

一方、「自分の性格をこう理解していて、そこからこういうことを成し遂げたいと考えていて、それを実現する環境として同業他社ではなく弊社が最適である理由を、ここまで説明できていた」——これはそのまま報告文になる。

つまり志望動機とは、面接官が報告文にそのまま書き写せる文章を渡す時間である。この視点に立つと、感情表現に紙幅を割く合理性がないことがわかる。書き写せないからだ。

三段の推論連鎖

では、書き写せる文章とはどういう構造をしているか。私が使っていたのは、次の三段の推論連鎖である。

  1. 自己分析の結果判明した自分の性格
  2. その性格を前提としたときに、自分が成し遂げたいこと
  3. 他社と比較した結果、それを成し遂げる環境として御社が最も適していること

これだけである。この三段が矢印でつながっていること。それが志望動機の完成条件であり、それ以上のものは要らない。

一段目は自分の内側から出発する。自分がどういう場面で力が出て、どういう場面で消耗するのか。何に対して納得がいかず、何をしているときに時間の感覚が消えるのか。この理解が、後続する二段の根拠になる。

二段目は、その性格を前提にしたときに自然に導かれる目標である。ここで重要なのは、目標が性格から導出されていることだ。性格と目標が無関係に並んでいるだけでは、連鎖ではなく箇条書きにすぎない。

三段目が、比較の段である。成し遂げたいことが決まっても、それを実現できる環境は通常複数ある。だから「その中でも御社が最も適している」を言うには、比較対象の集合を定義し、同じ観点で並べ、自分の目標に照らして順位づける作業が必要になる。この作業の中身については別稿(Q23・Q24)で詳述する。

なぜ論理が熱量として受け取られるのか

ここで補助線を一本引きたい。「熱量は、結局論理から生まれる」という命題そのものは私の実感だが、なぜそうなるのかという機序は、私の解釈として補って書く。

熱量とは、面接官の側から見れば、その会社のためにどれだけの時間と思考を投下したかの推定値である。面接官が本当に知りたいのは「この人は入社後も走り続けるか」であり、その予測材料として、選考期間中の投下量を見ている。過去の投下量は、将来の投下量の代理指標になるからだ。

ところが、投下量そのものは観測できない。説明会に何回来たかは記録に残るが、それは出席であって思考ではない。何時間考えたかは自己申告でしかなく、自己申告は検証できない。

観測可能な代理指標は、実は一つしかない。三段の連鎖が、どれだけ細かく、どれだけ矛盾なく組み上がっているかである。

三段目の「他社と比較した結果」を語るには、業界の収益構造を理解し、競合を列挙し、各社を同じ観点で並べる作業が要る。二段目の接続を語るには、自分の目標がなぜその形をとるのかを掘る作業が要る。一段目を語るには、自分の経験を掘り返して言語化する作業が要る。これらはいずれも短時間では作れない。付け焼き刃で作れば必ずどこかの接続が緩み、深掘りで露出する。

だから、連鎖の精度はそのまま投下量の証拠になる。声の大きさは投下量と無関係にいくらでも出せるが、破綻のない三段の連鎖は投下量なしには出せない。

言い換えれば、論理は熱量を伝えるための翻訳装置ではなく、熱量の唯一の観測窓である。熱量が先にあって論理が後から乗るのではない。論理が組み上がった状態を、面接官の側が熱量と呼んでいる。

感情表現を強めても熱量にならない三つの理由

裏側からも説明しておく。なぜ感情表現を強めても、それが熱量として認識されないのか。

第一に、差がつかないからである。 「第一志望です」「強く志望しています」は、誰でも、何の準備もなく言える。全員が最大値を申告する指標は、判別に使えない。面接官は複数の受験者を比較して合否を決めるので、全員が同じ値を出す変数は最初から評価軸から外れる。

第二に、検証も反証もできないからである。 「私が経験を通じてそう感じた」という解釈は他人が論理的に否定できない、という原則がある。感情の申告はこの性質を最も強く持つ。誰も「あなたは本当は志望していない」と論証できない。しかしこれは裏返せば、誰もそれを裏づけることができないということでもある。否定できないが確認もできない主張は、面接官の報告文に書けない。「本人は強く志望していると言っていました」という報告は、実質的に何も言っていない。

ここは重要な区別である。解釈が有効なのは、論理の連鎖の末端——「なぜIT業界なのか」と問われて一般論では反証されてしまう地点——において、それ以上崩されないための着地点としてである。連鎖の代わりに解釈を置いても、それは着地点ではなく、ただの空白になる。

第三に、感情表現の強さは、論理の欠落を埋め合わせる信号として読まれうる。 これは私の推測だが、面接官の側にも経験の蓄積がある。「とにかく御社が好きなんです」「なんとしても入りたいんです」で終わる回答は、三段の連鎖を作れなかったから感情に逃げた、と解釈される余地がある。つまり感情表現を強めることは、中立ではなく、条件によってはマイナスに働きうる。

なお、感情表現を一切使うなという主張ではない。論理が組み上がったうえで温度が乗るのは望ましい。問題は、論理の代替物として使う場合である。

三つの接続点、それぞれの壊れ方

実務的には、三段の連鎖は三つの接続点で壊れる。それぞれ壊れ方が違うので、対策も違う。

接続1: 性格 → 成し遂げたいこと

壊れ方は「並列」である。自己分析の結果としての性格と、成し遂げたいことを両方述べているが、両者の間に因果がない。面接官から見ると、無関係な二つの主張が接続詞なしで並んでいるように見える。

対策は、間に一段挟むことだ。その性格を持つ人間は、どういう状態に置かれると満足し、どういう状態だと不満を抱くのか。その満足条件を満たすものとして目標を提示すれば、二つは接続する。

接続2: 成し遂げたいこと → 業界

壊れ方は「一般論」である。ここが最も深掘りを受ける箇所でもある。

たとえば「IT業界で働きたい」という主張に対し、「なぜITなのか」という深掘りが来たとする。ここで「お客さんにとって一番効果が高いのがITだから」と一般論で答えると、即座に「でも金融も人材も経営にとって大事な資源だよね?」と返され、論理的に否定できる状態になる。一般論は、他にも当てはまるものがあるという形で必ず反証できるからだ。

だから私は、「あくまでも私にとってはITのインパクトが一番高いと感じた。なぜなら、アルバイト先でITツールを導入した際に……」という形で、経験を通じてそう感じたという主張に着地させていた。他人の解釈は論理的に否定できないので、それ以上深掘られることはない。ここが深掘りの終着点である。

先ほど「解釈を連鎖の代わりに置くな」と書いたのと矛盾するように見えるかもしれないが、位置が違う。ここでは連鎖はすでに組み上がっており、その連鎖の根拠の末端として解釈を置いている。連鎖の代わりではない。

接続3: 業界 → 自社

壊れ方は「比較の不在」である。業界までは説明できるのに、なぜその中でこの会社なのかが空欄になっている。「なぜ他社ではなくうちなのか」という質問は、この接続を直接狙い撃ちしている。

対策は、比較対象の集合を先に定義しておくこと、そして企業の特徴を自分の就活の軸に照らして長所/短所に変換する構造を持っておくことである。これは独立した論点なので別稿(Q23)に譲る。

会社側の方向性の材料は、中期経営計画・IR資料から取る。5年後・10年後に何を成し遂げようとしているかを読み、自分の中長期の方向と接続する。実際、私が第一志望としていた大手シンクタンク/ITコンサルティング企業の最終面接は、テーマ自体が「あなたにとって当社がファーストキャリアとしてふさわしいか否かを判断する場」だった。これは③そのものである。

志望度が低い業界で全通した、という反証実験

「熱量は論理から生まれる」という命題について、私自身の経験の中に一つ、実験に近いものがある。

私はIT業界で働きたいという気持ちがあったので、SIerを中心に選考を受けていた。その傍らで、面接練習として金融業界も受験していた。当然、金融の知見はなく、志望度も低く、事前準備にはほとんど時間を割いていなかった。

やったのは、「自分を採用することが御社にとってプラスになることを説明する」という原則に則り、IT企業向けに準備していたロジックの一部を金融業界向けに差し替えることだけだった。構造としてはこうである。

顧客のビジネスをサポートする業界で働きたい(業界横断)→ その中でも◯◯業界が最も適していると考える(業界で異なる)→ なぜならその業界の価値貢献の仕方が、顧客のビジネスを最大化するうえで最も重要だからだ(結論は業界共通)→ 具体的には……(根拠は業界別)

結果として、金融業界でも面接は全通した。

この事実が示しているのは、次のことだと私は考えている。感情としての熱意が存在しない状態でも、三段の連鎖が通っていれば面接は通る。つまり面接官が評価しているのは、感情の実在ではなく連鎖の成立である。もし感情の強度が評価対象なら、志望度がほぼゼロの業界で全通したという結果は説明できない。

逆向きの命題——志望度が高くても連鎖が通っていなければ落ちる——については、私の手元に対照実験にあたる明確な事例はない。これは構造からの推論であり、私の推測として書いておく。

選考フェーズごとの重み

志望動機の比重は、選考のフェーズによって変わる。私が受けた範囲では、次のような傾斜だった。

  • 一次面接: ガクチカ中心、最低限の能力確認。志望動機の比重は小さい
  • 二次面接: ガクチカと志望動機が半々、能力確認
  • 最終面接: 志望動機中心、志望度確認

つまり三段の連鎖の完成度が問われるのは、主に終盤である。ここから逆算すると、一次・二次の逆質問は、最終面接で使う材料を仕入れる時間として設計できる。一次では素直に情報を集め、二次ではそこで得た情報をもとに仮説を立てて確認し、最終では中期経営計画・IR資料の読解を仮説として提示する。この設計については逆質問の稿(Q25)で詳述する。

再現手順

  1. 就活の軸を先に決める。 三段のうち一段目と二段目にあたる。ここが決まっていないと、企業分析をいくらやっても三段目が組めない。抽象を先に決め、具体を後から拾う。
  2. 各段の根拠を「経験を通じた解釈」まで落とす。 特に接続2。一般論で止めない。
  3. 三段目の比較を、就活の軸から逆算したロジックツリーで作る。 詳細はQ23。
  4. 会社側の方向性を中期経営計画・IR資料から取る。 5年後・10年後に何を成し遂げようとしているか。
  5. 三段を接続詞でつないで音読し、各接続に「なぜ?」を三回ずつ当てる。 三回目で詰まる接続が、面接で崩れる接続である。
  6. 感情語を全部削って、意味が減らないか確認する。 減らなければ、元から論理だけで成立している。減るなら、感情語が論理の穴を塞いでいた証拠なので、その穴を論理で埋める。

最後の6が、本稿の主張を一番短く検算する方法である。

この方法の限界

三つ書いておく。

第一に、論理が通っていても志望度そのものを直接問われる場面がある。 「第一志望ですか」「他社の選考状況は」といった質問は、連鎖の完成度とは別の次元で答えを要求してくる。この扱いについてはQ23で述べる。

第二に、三段の連鎖は本心と乖離しうる。 論理は、本心とは独立に組み立てられる。私が志望度の低い金融業界で全通したのは、まさにその独立性の証明である。だからこの技術は、内定を目的関数に置いた場合の最適化としては機能するが、入社後に自分が満足するかどうかという別の論点には何も答えていない。この二つは切り分けて考えるべきである。

第三に、これは私の場合の観測である。 私はこの理解で全通したが、すべての企業・すべての面接官がこの構造で動いていると一般化するつもりはない。少なくとも、面接官が組織に対して説明責任を負っている限りにおいて、この構造は成立するはずだ、というのが私の立場である。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 熱意を「作ろう」としていた。強い言葉を探しては、自分で嘘くささを感じていた。

読んだあとのあなた 熱量が論理の接続から生まれると分かっている。だから作業が「気持ちを高める」から「三段の連鎖をつなぐ」に置き換わる。

明日からやること

  • やめる: 志望動機に感情表現を足すこと
  • 始める: 「自分の性質 → 成し遂げたいこと → 他社と比較して御社が最適」の三段を、破綻なくつなぐこと
前の記事ESは、面接の事前打ち合わせ資料である