面接で何を目指せばいいのかが、そもそも分からない。
良く見せようとすると空回りする。かといって、ありのままを話すだけでは通らない。「面接で勝つ」とは、具体的に何が起きている状態なのかを、誰も説明してくれない。
この記事では、その勝利条件を定義する。定義できるのは、面接官が面接のあとに何をしているかを知っているからである。
きっかけ ― 必勝法を教えてくれた人がいた
二つ目の気づきのきっかけは、教育系ベンチャーの優秀な若手社員から、就職活動の必勝法を教えてもらったことだった。
そこで示された前提は、私の面接の見方を根本から変えた。それはこういうものである。
面接官は、面接が終わった後、会社に対して学生の合否とその判断理由を報告している。
これは、言われてみれば当たり前のことである。しかし、この当たり前の事実を出発点に置くかどうかで、面接対策の設計は完全に変わる。
当時の私にとって、これは他人から聞いた話にすぎなかった。だが現在、私は自分の職場で採用活動に携わる側に回っており、この運用を内側から見ている。 面接官に対して事前にどういう情報が渡されるのか、面接後にどういう形式で報告が求められるのか、その報告が次の工程でどう使われるのか。学生の頃に聞いた話は、正確だった。
したがって、この前提は私にとって推測ではなく、観測に基づく事実である。
一点だけ留保を付けておく。私が内側から見ているのは自社の運用であり、すべての企業がまったく同じ手続きを採っているとまでは言えない。ただし、面接官が単独で最終的な採用権限を持つ企業は稀であり、複数回の面接を経て合否が決まる以上、面接官の判断が何らかの形で言語化されて次の工程に渡ることは、構造上ほぼ避けられない。 報告の形式が文書か口頭か、フォーマットが定型か自由記述かといった差はあっても、「面接官は理由を説明する必要がある」という一点は共通していると考えてよい。
構造 ― 面接官は「好き嫌い」で決めていない
この前提を置くと、面接官という存在の見え方が変わる。
面接官は、あなたを気に入るかどうかで合否を決めているのではない。上司や人事部に対して説明できる理由があるかどうかで決めている。
面接官にも立場がある。自分が通した学生が次の面接で落ちれば、見る目がなかったことになる。自分が落とした学生について「なぜ落としたのか」と問われれば、答えなければならない。つまり面接官は、自分の判断を組織に対して弁明する責任を負っている。
ここから、本ナレッジで最も重要な系が導かれる。
面接とは、面接官に、合格を出す理由を渡す時間である。
受験者の仕事は、自分を良く見せることではない。面接官が組織に対して説明できる材料を渡すことである。この二つは似ているようで、まったく違う。前者は自分が主語であり、後者は面接官が主語である。
そして、面接官が組織に説明できる形式は、論理しかない。「なんとなく良かった」は報告として成立しない。「感じの良い学生でした」も、それ単体では判断理由にならない。報告として成立するのは、「AだからBであり、したがって合格を出した」という形の説明だけである。
だから、業界を問わず、企業を問わず、職種を問わず、論理的に説明できる受験者が通る。これが、面接という制度の本質だと私は考えている。
では、何が「合格する理由」になるのか
面接官に合格の理由を渡すべきだとして、では何を渡せばいいのか。
答えは、その会社で活躍する可能性が高いことの根拠である。
なぜそれが答えになるのかは、採用というものの性質から導かれる。企業は採用に多額のコストを払っている。求人広告、説明会、社員の稼働、内定後の研修。すべて投資である。投資である以上、企業が回収したいのは、入社後に活躍してくれることと、簡単には辞めないことの二つである。
面接官が組織に対して書ける最も強い報告文は、したがって「この学生は当社で活躍する可能性が高い。なぜなら〜だからだ」という形になる。
受験者がやるべきことは、この文の「なぜなら」以下を、面接官に代わって用意してあげることである。
ここからがコツ ― 「優秀な人の定義」を本人たちから聞く
問題は、その「なぜなら」以下の中身をどこから調達するかである。
ここで多くの学生が間違える。自分が思う「優秀さ」を語ってしまうのである。しかし、活躍する人の条件は、業務の性質によって決まる。外から想像しても当たらない。営業で活躍する人の条件と、システム開発で活躍する人の条件と、研究職で活躍する人の条件は、まったく違う。それは、やっている仕事が違うからである。
では、どうすれば分かるか。私が使った方法は単純である。
逆質問や会社説明会の場で、「一番優秀だなと思う人の特徴を教えてほしい」と質問する。
これだけである。しかし、この質問には設計上の美点が三つある。
第一に、答えが業務の性質を経由して返ってくる。 社員は「なぜその人が優秀なのか」を説明しようとして、必然的に「この仕事はこういう性質だから」という前提から話し始める。つまり、②活躍できる素養の情報だけでなく、①業務の実態の情報も同時に手に入る。
第二に、質問すること自体が加点になる。 「どんな人が活躍しますか」という質問は、その会社で活躍することを前提に考えている学生にしか出てこない。質問そのものが、志望度と思考の深さの証拠として機能する。
第三に、社員が使った言葉がそのまま手に入る。 社員は自分の言葉で答える。その言葉には、その会社・その業界に固有の語彙が含まれている。この語彙をそのまま自分の回答に組み込むと、面接官にとっては「自社の言葉で話す学生」になる。これは私の推測を含むが、面接官が組織に報告する際、自分たちが日常的に使っている言葉で書かれた根拠は、そのまま報告文に転用できるはずである。
聞く場は、逆質問に限らない。会社説明会の質疑応答、OB・OG訪問、インターンシップの座談会、社員との懇親会。社員と話せる機会はすべて、この情報の採取場所になる。そして、一次面接で得た情報を二次面接で使う、という積み上げ方ができる(この運用については、選考段階ごとの逆質問の設計として別途詳しく述べる)。
得た情報をどう使うか ― 営業職の例で分解する
実際に得られる回答と、その使い方を、営業職の例で説明する。
社員からの回答は、たとえばこうである。
アポが取れても、成約する確率は低い。だから試行回数を増やすことが必要になる。そのため、優秀な人はすべからく失敗を怖がらない。
この回答を構造に分解すると、三段になっている。
- 業務の性質: 成約率が低い
- そこから要請される行動: 試行回数を増やす必要がある
- その行動を継続できる資質: 失敗を怖がらない
つまり社員は、①業務の実態から②活躍する素養を導出する論理を、丸ごとこちらに渡してくれている。この時点で、自分が証明すべき素養は「失敗を怖がらないこと」に確定する。
あとは、その素養をガクチカと志望動機で表現するだけである。
ガクチカ: 学生時代はサークル活動で何回も失敗したが、諦めなかった。その結果、結果を残した。
志望動機: 失敗を怖がらないことが自分の長所なので、営業職はそれを活かせると考えている。
これで何が起きるか。面接官は、面接後の報告書にこう書ける。
当社の営業は成約率が低く、試行回数を積める人材でなければ活躍できない。この学生は、サークル活動で反復的な失敗を経験しながら継続し、結果を出している。当社の営業職で活躍する素養を有していると判断した。
この報告文を、受験者が代わりに書いて渡したのである。面接官は、受験者の言葉を並べ替えるだけでよい。
多くの学生は「素材」を渡す。自分の経験、自分の長所、自分の熱意。それらは面接官が自力で加工しなければ報告文にならない。忙しい面接官が、その加工作業を全員分やってくれると期待するのは楽観的である。完成品を渡した学生が通る。
倫理的な論点を隠さずに書く
ここで、この方法が持つ性質について、正直に書いておく必要がある。
これは、志望職種のペルソナに自分を寄せにいくという行為である。相手が求める人物像を先に特定し、それに合致する自分の側面を選んで提示している。内定を目的関数に置いた場合、これは最適解である。しかし、それが唯一の正しい振る舞いだとは言えない。
私の立場を明確にしておく。ここで寄せているのは解釈の焦点であって、事実ではない。人間には複数の性質があり、複数の経験があり、一つの経験にも複数の側面がある。そのうちどれに光を当てるかを、相手に合わせて選んでいる。これは編集であって、捏造ではない。
一線を越えるのは、持っていない資質を持っていることにする場合である。これは倫理的に問題があるだけでなく、実務的にも機能しない。深掘りの質問が来たときに、裏づける具体例が出てこないからである。面接官が「その場面で具体的に何をしたのですか」「なぜそう判断したのですか」と二段、三段と掘っていけば、実在しない資質はほぼ確実に崩れる。
そして、より根本的な論点がある。選ぶべき素養は「業務から要請されるもの」と「自分の中に実在するもの」の交差点になければならない。 交差点が存在しない職種は、そもそも自分に向いていない可能性がある。内定を取ることと、入社後に幸福に働けることは、別の問題である。この方法は前者に答えるものであり、後者には答えていない。その限界は、読者に対して明示しておきたい。
四つの気づきが収束する一点
四つの気づきは、別々のきっかけから、別々の場面で得られたものである。しかし、構造で整理すると、すべてが一つの命題に収束する。
面接とは、面接官が組織に提出する「合格を出した理由」の報告文を、こちらで書いて渡す作業である。
この一点から、四つを見直してみる。
第一の気づき(発言のコントロール)は、報告文に余計な減点材料を混ぜないための技術である。 面接官の判断材料はESと自分の発言だけであり、減点は事実として残る。だから、証明すべきことを証明し終えたら、それ以上は話さない。面接官の発言を肯定し、自分の話す時間を最小限にするのは、報告文をきれいなまま保つための作業である。
第二の気づき(優秀な人の定義を聞く)は、報告文の本体を手に入れる作業である。 「なぜこの学生は当社で活躍するのか」という部分の中身を、社員本人から調達する。①業務の性質から②活躍する素養を導く論理を、そのまま受け取って、自分の経験に接続する。
第三の気づき(IR資料との一致)は、報告文の「辞めない理由」の部分を作る作業である。 採用は投資であり、活躍することと定着することの両方が必要になる。中長期の方向の一致は、意志ではなく構造として説明できるので、報告文に書ける形式になる。
第四の気づき(GDの進行)は、報告文に書ける具体的な行動を残す作業である。 アイデアの質は解釈を経由しないと報告できないが、「議論の逸脱を検知して軌道を戻した」は事実として記述できる。しかも、その能力は入社後の業務に直結するので、活躍の予測につながる。
四つとも、主語は自分ではない。面接官である。
面接対策とは、自分を良く見せる訓練ではない。他人が自分について書く文章を、あらかじめ代筆しておく作業である。この視点の転換が、私にとって最大の「コツを掴んだ瞬間」だった。
その報告文には形式がある
そして、面接官に渡すべき報告文には、決まった形式がある。証明すべきものは、突き詰めると三点しかない。
- ①御社の業務 ― その会社・その職種で実際に何が行われているかの理解
- ②御社で活躍できる素養 ― ①を踏まえたとき、活躍する人が持っている資質を、自分が持っているという証明
- ③御社を辞めない理由 ― 中長期の自分の方向性と、会社の方向性が一致しているという証明
本ナレッジでは、これを3点セットと呼ぶ。
第二の気づきで手に入れた「優秀な人の定義」は、①と②を作る材料である。第三の気づきで扱った中期経営計画との一致は、③そのものである。第一の気づきの発言コントロールは、①②③を渡し終えた後に、それを壊さないための技術である。そして第四の気づきのGDは、②を行動として実演する場である。
ES、自己PR、ガクチカ、志望動機、逆質問、そしてケース面接に至るまで、選考のすべての要素は、この3点のいずれかを証明するための手段として位置づけられる。
四つの気づきは、この3点セットという一つの器に、すべて収まる。
そして最後に、この方法論の性質についてもう一度触れておきたい。ここまで述べてきたのは、内定を取ることを目的関数に置いた場合の最適化である。志望職種のペルソナに自分を寄せ、面接官が報告しやすい形に自分を整形する。この方法は、内定という一点については有効だと私は考えている。しかし、入社後にその職場で自分が幸福に働けるかという問いには、この方法論は答えていない。二つは別の問題である。その区別を持ったうえで、使ってほしい。
この記事を読む前と、読んだあと
読む前のあなた 「どう見られるか」を考えていた。だから、自分を良く見せる方向にばかり努力が向かっていた。
読んだあとのあなた 「何を渡すか」で考えられる。面接官が組織に報告する一文を、こちらから用意する作業だと分かっている。
明日からやること
- やめる: 自分を良く見せようとすること
- 始める: 説明会や逆質問で「一番優秀だと感じる方の特徴」を聞き、その定義に自分の経験を当てはめること