面接解体新書就活・転職の面接・選考攻略メディア
面接解体新書第1弾|転機の解剖

今でも覚えている4つの落選と、いま分かるそれぞれの死因

なぜ落ちたのか、自分で分析できない。

不合格の理由は教えてもらえない。だから振り返っても、「相性が悪かった」「たまたまだろう」で終わってしまう。終わってしまうから、次の面接に何も持ち越せない。

この記事では、私がいまでも覚えている4つの落選を、聞かれたこと/自分が答えたこと/いま分かる死因/そこから取り出せる原則の4層で解剖する。

落選の記録は、成功談より役に立つ。うまくいったときは、何がうまくいったのかが分からないからである。


落選のほうが、合格より多くを教えてくれる

受かった面接のことは、あまり覚えていない。うまくいったときは、何がうまくいったのかが分からないからだ。合格は「自分がやったこと」と「結果」の因果を教えてくれない。

一方、落選は覚えている。しかも、落ちた瞬間ではなく、あとから振り返って「あれが死因だったのか」と分かった瞬間のほうを、鮮明に覚えている。私がこの一連のナレッジで語っている原則は、そのほとんどが落選から逆算して抽出したものである。

ここでは、今でも覚えている4社を挙げる。それぞれについて、聞かれたこと、自分が答えたこと、いま分かる死因、そしてそこから取り出せる一般原則の4層で書く。

なお、原型は5社挙げるつもりだったが、記憶が確かなのは4社である。曖昧な記憶で5社目を作るより、確かな4社を厚く書くほうが読者の役に立つと判断した。


1. 人材系ベンチャー — 9人のグループディスカッションで、一言も発せなかった

何が起きたか

3日間にわたるオンライン形式の選考で、グループディスカッション(以下GD)が課された。1グループ9人という、いま思えば異常な人数である。

私はほとんど発言できなかった。理由ははっきりしていて、自分の発言が本当に議論に必要なのか、確信が持てなかったからだ。

9人もいると、誰かが何かを言うたびに、別の誰かが似たことを言う。自分が思いついたことは、たいてい既に誰かが口にしている。そこに屋上屋を架すような発言をするのは、議論を前に進めない無駄な音ではないか。そう考えているうちに時間が過ぎた。

沈黙は、慎重さの表れだった。少なくとも自分ではそう思っていた。結果は不合格だった。

いま分かる死因

死因は「発言しなかったこと」そのものである。そしてもっと正確に言えば、その選考が何を測っているかを、私が読み違えていたことである。

あの場で通っていたのは、議論の質を上げた人ではなかった。先頭に立って場を取りに行った人だった。極端に言えば、発言の中身の精度が高くなくても、議論をリードしようとする姿勢を見せた人が評価されていた。

なぜそうなるかは、いまなら説明できる。9人のGDは、面接官が9人分の判断材料を集めるには短すぎる。 30分程度で9人を評価するなら、一人あたり3分強しかない。この制約下で面接官が観測できるのは「誰が場を動かしたか」という、極めて粗い信号だけである。発言しない人は、観測されない。観測されない人は、報告文に書く材料がない。材料がなければ、面接官は合格を出せない。

つまり、私は「良い議論をすること」を目的関数だと思っていたが、実際の目的関数は「面接官に観測されること」だった。沈黙は、慎重さとして評価されるのではなく、データの欠損として処理される。

取り出せる原則

原則1: 面接官への入力がゼロなら、出力もゼロである。 面接官が持つ判断材料はESと、自分が発した言葉の2つしかない。発言しないというのは、2つのうち1つを自分から放棄することである。中身の精度を上げる努力は、材料が存在してはじめて意味を持つ。

原則2: 選考形式ごとに、何が観測可能かを先に見積もる。 1対1の面接では発言の質が観測できるが、9人GDでは観測できない。形式が変われば評価軸も変わる。GDの人数と時間から、面接官が何を見られるかを逆算しておくべきだった。

ただし、別の論点がある

正直に書いておくと、いま同じ場に戻って目立ちにいけるかというと、自信はない。そしてもう一つ、そういう選考スタイルの企業が自分に合うかどうかは、内定するかどうかとは別の論点である。前に出ることを評価する選考は、前に出続けることを求める職場と対応していることが多い。落ちたこと自体は、必ずしも損失ではなかったのかもしれない。


2. 大手証券会社 — 最後の一言で、自分から墓穴を掘った

聞かれたこと・答えたこと

面接の最後、ほぼ終わりかけたタイミングで、面接官がこう言った。

面接官: 「あなたは、メンタルが強そうですね」

私はこう答えた。

私: 「いえ、そんなことはないです。落ち込むこともあります」

これで落ちた。性格的に営業として適性がない、と判断されたのだと考えている。

いま分かる死因

この一言は、私にとって最も教訓の濃い失敗である。理由は、面接の受け答え自体は間違っていなかったと考えられるからだ。

面接官が「メンタルが強そうですね」と言った、という事実に注目してほしい。これは面接官の頭の中に、既に「この学生はメンタルが強い」というイメージが形成されていたことを意味する。証券会社の営業職において、これは②御社で活躍できる素養の中核である。つまり、私はそこまでの受け答えで、望ましいペルソナの形成に成功していた。

そして、面接官のこの発言は、質問ではなかった。確認であり、ほぼ合格理由の読み上げだったと私は解釈している。面接官は自分の報告文の下書きを、本人の前で音読していたようなものである。

そこに私は、自分から反証を差し出した。

面接官が組織に報告する文章は、この一言によって書き換えられる。「メンタルが強く、営業として適性がある」から、「メンタルの強さを本人が否定した。営業職としての適性に疑問が残る」へ。私は、面接官が既に書き終えていた合格理由を、自分の手で消しにいった。

謙遜のつもりだった。日常会話としては、むしろ礼儀正しい応答である。だが面接は日常会話ではない。ここで作用していたのは、次の一点に尽きる。

取り出せる原則

原則3: 面接官にとっての入力情報は、①ESと②面接において自分から発した言葉の2点しかない。

これは私が繰り返し使っている公理だが、この失敗ほど鮮やかにそれを示す例はない。面接官は私の内面を見ていない。私が本当に打たれ強いかどうかも、実際に落ち込む頻度も、観測していない。観測しているのは、私が口から出した音だけである。

だから、面接官が既にプラスの解釈を持っているとき、そこに触る必要はまったくない。余計なことを言わない、というのは態度の話ではなく、勝率の話である。

実務的な行動指針としては、こうなる。

  • 面接官が自分について肯定的な解釈を述べたときは、否定しない。「ありがとうございます。実際、◯◯の場面ではそう言われることが多いです」と、根拠を一つ足して受け取る
  • 自分にとってマイナスにならない限り、基本的に面接官の発言は肯定する。「その認識で合っています」と言えるなら言う
  • 話す量を最小化する。ゆっくり話す、逆質問で面接官の回答に追加質問を重ねるなど、自分の発話量が減る設計にする。発話量は、事故の発生確率に比例する

ここにも別の論点がある

ここでも留保を書いておく。内定を目的関数に置くなら、志望職種のペルソナに自分を寄せにいくのが最適解である。だが、自分の性質がその職種に本当に合っているかは、まったく別の問いである。 私はあの場でメンタルの強さを演じ切ることもできたはずだが、演じ切って入社した先で、実際に落ち込む自分が営業職を続けられたかは分からない。ペルソナに寄せる技術は強力だが、寄せた先が自分の居場所になるとは限らない。

この落選が、すべての起点になった

そして、この一社には特別な意味がある。

私が「面接とは、自分の発言をコントロールすることで結果をコントロールできるゲームである」と気づいたのは、この面接がきっかけだった。

それまで私は、面接の結果を、相性や運や、あるいは自分の能力の総体で決まるものだと考えていた。だがこの面接では、落ちた理由が一言に特定できてしまった。 数十分かけて積み上げた評価が、最後の十秒の一言で崩れた。その因果があまりに明瞭だったので、逆に「では、その一言を言わなければ通ったのではないか」という問いが立った。

そこから、面接官が持っている入力は2つしかない、自分が動かせる変数は発言だけである、という理解に至った。この理解が、以降のすべての準備の土台になっている。最も痛い落選が、最も多くを教えてくれた。


3. コンサルティングファーム — 意図の読めない奇問に、正直に答えすぎた

聞かれたこと・答えたこと

面接官: 「第一志望の企業を3社挙げてください。そして、その3社すべてから内定が出たら、どこに行きますか」

私は、独立系の総合コンサルティングファーム、大手シンクタンク系のIT企業、大手デベロッパーの3社を挙げ、「独立系の総合コンサルティングファームに行きます」と答えた。

面接を受けていたのが、まさにその独立系のファームだったからである。そして、正直に言えば、実際に内定が3つ出たとして、そこに行くつもりはなかった。

落ちた。

いま分かる死因

この質問の意図は、正直に言っていまだに分からない。志望度を測っているのか、正直さを測っているのか、価値観の優先順位を見ているのか、あるいは単に反応を見ているだけなのか。

分からないなりに、いま同じ質問を受けたらどう答えるかは決まっている。論理的に答えられればそれでよい、である。

「御社に行きます」という結論自体は、おそらく間違っていなかった。問題は、結論に理由を付けなかったことだと考えている。

  • 「初任給が高いので、若いうちに自己投資に回せる原資が作れるから」
  • 「若手のうちから裁量が大きく、成長速度が最も速いと判断したから」

理由は正直なところ何でもよい。重要なのは、面接官が報告文に一行書ける状態にすることである。理由のない選択は、報告文に載らない。載らないものは意思決定に残らない。

取り出せる原則

原則4: すべての質問でインパクトを残す必要はない。

面接には、明らかに配点の高い質問(ガクチカ、志望動機、深掘り)と、配点の読めないトリッキーな質問がある。後者に全力を投じるのは、資源配分として誤っている。

こうしたトリッキーな質問には、当たり障りのない回答に、当たり障りのない理由を一つ添えるのが最適解である。奇問に対して奇答を返す必要はない。減点されないことが目的であって、加点を狙う場面ではない。

これは、想定外の質問への対処法とも接続している。答えの正しさより、結論と根拠が整合していることのほうが重要である。


4. 大手損害保険会社 — 「サークルのガクチカはインパクトがない」と言われた

何が起きたか

一人あたり10分の集団面接だった。特徴的だったのは、面接の最後にフィードバックの時間があったことである。そこで面接官から、こう言われた。

「サークルのガクチカは、インパクトがないですね」

その場では、そういうものかと受け取った。サークル活動というありふれた素材で勝負したのが間違いだったのだと。

いま分かる死因

いまは、この理解は誤りだったと考えている。問題はエピソード自体にインパクトがないことではなく、インパクトのある場所を私が明確にできなかったことである。

というより、どんなエピソードにもインパクトのある場所は存在する。存在するが、それがどこかを話し手が特定していないと、聞き手はそれを見つけられない。10分の集団面接であればなおさらである。

ただし、ここには非対称性がある。これは認めるべきだ。

起業した、大会で優勝した、といった派手な実績は、経験それ自体で戦える。 結果が既に定義されていて、しかも社会的に共有された物差しの上に載っているからである。「優勝」と言えば、それが何を意味するかは説明不要で伝わる。

一方、サークル活動やアルバイトのように、既存の仕組みを維持する役割を担った経験は、結果の定義から始めなければならない。 何をもって成果とするのかを、話し手が自分で決めて、しかもそれが妥当だと聞き手に納得させる必要がある。工程が一つ多い。だから難度は高い。

私はその一工程を飛ばして、「サークルの代表として、こういうことをやりました」と、活動内容を並べてしまっていた。「◯◯をやった」は、聞き手にとって処理不能な入力である。 大学生の多くがサークルに所属している以上、活動したこと自体は情報量がゼロだからだ。

取り出せる原則

原則5: 派手な実績がない場合、「何をやったか」ではなく「何を成し遂げたか」で語る。

つまり、結果ベースの構文に変換する。

  • 悪い: 「サークルの代表として、新歓活動の運営を担当しました」
  • 良い: 「サークルの代表として、前年比で新入部員の定着率を改善しました」

後者は、結果を自分で定義している。定義した以上、なぜそれが成果と言えるのか(=なぜ定着率が課題だったのか)を説明する責任が生じるが、その説明こそが、思考の過程を見せる場所になる。

原則6: インパクトをどこに置くかを、話す前に自分で決めておく。

派手な実績を持つ人は、インパクトの置き場所を選ぶ必要がない。実績そのものがインパクトだからである。地味な素材で戦うなら、「この話のどこを聞かせたいのか」を先に決める作業が必須になる。これは不利ではなく、単に工程が一つ多いというだけである。

この落選には、もう一つの価値があった

そしてもう一つ、この落選には別の意味がある。フィードバックをもらえたこと自体である。

普通、面接は結果しか返ってこない。何が良くて何が悪かったかは分からない。落ちた理由を自分で推測するしかなく、その推測が当たっているかを検証する手段もない。

この一社だけが、判定の中身を開示してくれた。面接官の頭の中で自分がどう処理されているかを、初めて外から観測できたわけである。しかも、その内容は自分の想定と違っていた。私は「サークルという素材が弱かった」と受け取ったが、実際の問題は素材ではなく、インパクトの置き場所を自分で決めていなかったことだった。

自分の推測と、外からの観測がずれていた。 これを知れたことに、10分の面接以上の価値があった。落ちた面接の中で、最も情報量の多い一社だった。


4つの落選から出てくる、一つの構造

並べてみると、4つの死因はすべて同じ構造に還元できる。

人材系ベンチャー - 直接の死因: 発言しなかった - 構造的な死因: 面接官への入力を自分で放棄した

大手証券会社 - 直接の死因: 余計な一言を言った - 構造的な死因: 面接官が持っていた合格理由を自分で消した

コンサルティングファーム - 直接の死因: 理由を付けずに答えた - 構造的な死因: 面接官が報告文に書ける材料を渡さなかった

大手損害保険会社 - 直接の死因: 活動内容を並べた - 構造的な死因: 面接官が評価できる形式に変換しなかった

4つとも、「面接官が組織に報告できる合格理由を、渡せなかった/渡したものを自分で回収した」という一点に収束する。

落ちた理由は、能力が足りなかったことではない。伝達に失敗したことである。そして伝達は、技術であり、手順である。だからこそ、あとから再現可能な形に落とし込むことができた。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 落ちた理由が分からないまま、次の面接を受けていた。振り返りが「運が悪かった」で止まっていた。

読んだあとのあなた 落選を死因ごとに分類できる。入力を放棄したのか、合格理由を自分で消したのか、材料を渡さなかったのか、形式に変換しなかったのか。分類できるから、次に持ち越せる。

明日からやること

  • やめる: 落選を「相性」で片づけること
  • 始める: 直近で落ちた面接を1つ選び、4つの死因のどれに当てはまるかを判定すること
前の記事話し方へのこだわりは割に合わない