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面接解体新書第7弾|中途(転職)面接

退職理由は、「再発可能性」という一つの軸で採点されている

退職理由を正直に話すと、落ちる気がする。

業務量が多い。人間関係が合わない。評価が不当だった。どれも事実なのに、そのまま話すと通らない気がする。 かといって、嘘もつきたくない。

この記事では、その二択から抜ける方法を書く。退職理由は、たった一つの軸で採点されている。 その軸を知れば、嘘をつかずに組み立てられる。


退職理由は、過去の説明ではなく将来の予測として読まれている

転職面接で必ず聞かれるのが、「なぜ現職を辞めようと思ったのですか」である。

この質問を、多くの人は「過去の出来事についての説明を求められている」と受け取る。だから、実際に何が不満だったかを説明しようとする。

だが、企業側がこの質問で知りたいのは、過去ではない。将来である。

採用は投資であり、企業は回収前に離脱する可能性が高い人材を採用しない。したがって、面接官がこの質問で測っているのは、次の一点である。

この人物が現職を辞める原因になったものは、当社でも発生しうるか。

発生しうるなら、同じことが繰り返される。発生しえないなら、繰り返されない。

退職理由は、「再発可能性」という単一の軸で採点されている。 この軸を理解すれば、どんな退職理由が通り、どんな退職理由が通らないかは、すべて機械的に判定できる。

組み立ての原則

原則は、一文で言える。

現職を辞めたい理由が、現職に固有のものであり、転職先では発生しえないことを、論理的に説明する。

「固有」と「発生しえない」の2つが条件である。両方を満たさなければならない。

通らない退職理由の構造

原則の意味を理解するには、通らない例を見るのが早い。

反例: 忙しさに起因する理由

たとえば、「現職の業務量が過大で、心身の負荷に耐えられなくなった」という理由を挙げたとする。

これは、本人にとっては切実で、かつ正直な理由かもしれない。だが、面接官の側から見るとこうなる。

「当社も、繁忙期には同程度に忙しくなる可能性がある。そのとき、この人物は再び同じ理由で辞めるのではないか」

この理由は、転職先でも発生しうる。 したがって、再発可能性が高いと判定される。判定された時点で、③辞めない理由の証明が成立しない。

面接官が組織に書く報告文は、こうなる。

「現職の業務負荷を理由に転職を検討している。当社でも同様の状況は発生しうるため、定着に懸念が残る」

この報告文が上がれば、合格は難しい。面接官が意地悪なのではなく、報告文を書いた時点でそう読めてしまう構造になっている。

通らない理由の一般形

同じ構造で判定すると、次のような理由はいずれも通りにくい。

  • 業務量が多い … 転職先でも発生しうる
  • 人間関係が合わない … 転職先でも発生しうる
  • 上司の評価が不当だった … 転職先でも発生しうる
  • 給与が低い … 相対的な問題なので、転職先でも発生しうる
  • 社風が合わない … 転職先でも発生しうる。かつ主観的で検証もできない

いずれも再発リスクが高いと判定される。

これらに共通するのは、原因が「どの会社にも存在しうる一般的な条件」に置かれている点である。 一般的な条件を理由にすると、その条件が転職先でも成立した瞬間に、同じ結論が導かれてしまう。

通る退職理由の構造

逆に、通りやすいのは次のような形である。

  • 現職の事業構造上、やりたい領域の仕事が存在しない … 転職先にその領域が存在するなら、再発しえない
  • 現職では扱えない技術/領域で専門性を積みたい … 転職先で扱えるなら、再発しえない
  • 現職の担当範囲が上流/下流に限定されており、一気通貫で関わる経験が積めない … 転職先の業務範囲が違うなら、再発しえない

いずれも再発リスクが低いと判定される。

これらに共通するのは、原因が「その会社の構造」に置かれている点である。 事業ポートフォリオ、担当範囲の切り分け方、扱っている技術領域。これらは会社ごとに異なるので、転職先では別の状態になる。だから再発しない。

通る理由の作り方: 3つの手順

手順1: 現職の「構造」に理由を求める 感情や人ではなく、事業構造・業務範囲・技術領域といった、会社の設計に起因するものを探す。

手順2: その構造が、転職先では異なることを確認する ここを確認せずに語ると、「当社も同じですが」と返されて終わる。転職先の構造を調べたうえで、差分が実在することを確認しておく必要がある。

手順3: 「だから御社である」という接続まで作る 退職理由と志望動機は、本来ひと続きの論理である。「現職ではAができない → 御社ではAができる → だから御社を志望する」という形にすると、退職理由がそのまま志望動機の前半になる。分けて用意するのではなく、一本の論理として作る。

この構造だと、面接官の報告文はこうなる。

「現職の事業構造上、本人が積みたい領域の経験が積めないことが転職理由であり、当社の業務範囲であればそれが可能である。動機と当社の実態が整合しており、定着可能性は高いと判断した」

退職理由が、そのまま③辞めない理由の証明になっている。 これが理想形である。

ネガティブな本音をどう処理するか

ここが、この質問の実務上の核心である。

多くの人の本音は、上の整理の「通らない側」にある。忙しさ、人間関係、評価への不満。これらが実際の動機であることは珍しくない。

私の立場は、こうである。嘘をつくのではなく、複数ある事実のうち、再発しない側面を選んで前面に出す。

なぜこれが嘘ではないのか

退職の理由が単一であることは、まずない。人が会社を辞めるとき、複数の要因が同時に働いている。

  • 業務量が多い
  • そのうえ、その業務が自分の積みたい経験と噛み合っていない
  • 現職の事業構造上、噛み合う業務に異動できる見込みも薄い
  • 上司との相性もあまり良くない

このうち、どれか一つだけが真の理由である、ということはない。すべてが理由である。

とすると、面接で語る理由を選ぶという行為は、嘘をつくことではなく、複数ある真実のうちどれを提示するかを選ぶことである。これは編集であって、捏造ではない。

境界線は明確である。

  • 編集(やってよい): 実在する複数の理由のうち、再発しないものを選んで前面に出す
  • 捏造(やってはいけない): 存在しない理由を作る。実在しない不満を主張する

後者をやると、深掘りで崩れる。「具体的にどういう業務がやりたかったのですか」「なぜ現職ではそれができないのですか」と2〜3階層掘られれば、実体のない理由は必ず露呈する。

だからこそ、先に「本当の理由」の棚卸しが必要になる

編集をするには、編集対象が必要である。したがって、準備の第一歩は、辞めたい理由を全部書き出すことになる。

  • 感情的なもの、みっともないと感じるものも含めて、10個以上書き出す
  • それぞれについて、「これは現職の構造に起因するか、それとも一般的な条件か」を判定する
  • 構造に起因するものを抽出する
  • 抽出したものが、転職先では異なる状態になっていることを確認する

ここで構造起因の理由が一つも見つからないなら、それは重要な情報である。 転職しても状況が変わらない可能性が高い、ということだからだ。

事実に反する説明をした場合のリスク

ここは、誠実に書いておかなければならない。

面接で「やりたいことができない」「専門性を積みたい」と説明したが、実際には業務量や人間関係が主因だった、という場合、何が起きるか。

転職先でも、同じ理由で辞める可能性が高い。

理由は単純で、本当の原因が解消されていないからである。業務量が主因だった人が、業務量の多い会社に転職すれば、同じ結果になる。人間関係が主因だった人が、対人ストレスの高い職場に転職すれば、同じ結果になる。

面接を通過するための説明と、自分の意思決定は、まったく別の作業である。面接官を説得する論理と、自分を説得する論理を混同すると、その代償を払うのは自分である。

だから、実務的にはこうすべきだと私は考えている。

  1. 自分の中では、本当の理由を正確に把握しておく(棚卸しの段階でこれをやる)
  2. その本当の理由が、転職先で解消されるかどうかを、自分のために検証する
  3. 解消されるなら転職する。されないなら、転職先の条件を見直す
  4. そのうえで、面接では再発しない側面を選んで語る

2と3を飛ばして4だけをやると、内定は取れても、同じ問題を持ち越すことになる。 内定を目的関数に置いた最適解と、自分の状況を改善する最適解は、同じではない。

実行チェックリスト

  • [ ] 辞めたい理由を、感情的なものも含めて10個以上書き出した
  • [ ] それぞれを「現職の構造に起因」と「一般的な条件」に分類した
  • [ ] 構造起因の理由を1〜2個抽出した
  • [ ] その構造が、転職先では異なる状態になっていることを、求人票や企業情報で確認した
  • [ ] 「現職ではAができない → 御社ではAができる → だから御社」という一本の論理を作った
  • [ ] その論理に「なぜ?」を3回ぶつけて、崩れないことを確認した
  • [ ] (自分のために)本当の主因が、転職先で解消されるかを検証した

注意点

第一に、現職を否定的に語りすぎないこと。 構造に起因する理由を語るとしても、それを「現職はダメな会社だ」という語り方にしてはいけない。面接官は「この人物は当社についても、外では同じように言うのだろう」と受け取る。現職の構造は、良し悪しではなく、自分の志向との相性の問題として語る。 これは、企業の特徴が自分の軸という前提を置いて初めて長所・短所に変わる、という新卒面接での考え方と同じ構造である。

第二に、退職理由と志望動機を別々に用意しないこと。 両者が別々の論理で作られていると、接続部分に矛盾が生じる。一本の論理として設計すべきである。

第三に、転職回数が多い場合、この処理だけでは足りない可能性がある。 毎回「構造が合わなかった」と説明すると、「では次も合わないのではないか」と読まれる。回数が多い場合は、各回の理由を一貫した軸で説明できるかが問われる。これについては、私自身の経験の範囲を超えるため、断定的なことは書けない。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 本音を隠すか、正直に言って落ちるかの二択で考えていた。だから退職理由が組み立てられなかった。

読んだあとのあなた 再発可能性という一軸で、すべての退職理由を採点できる。実在する複数の理由のうち、再発しない側面を選べばよいと分かっている。

明日からやること

  • やめる: 「本音を言うか隠すか」で悩むこと
  • 始める: 辞めたい理由を10個書き出し、「現職の構造に起因するもの」と「どの会社にもある一般的な条件」に分類すること
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