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面接解体新書第2弾|面接の評価構造

「結論ファースト・笑顔・ハキハキ」は、必要条件ではなく加点要素である

定番アドバイスは、なぜあれほど言われるのに効かないのか

就活の指南は、突き詰めると3つの単語に収束する。結論ファースト、笑顔、ハキハキ。書籍でも、大学のキャリアセンターでも、先輩からのアドバイスでも、だいたいこれが出てくる。

問題は、この3つを完璧に実行しても落ちる人が大量にいる、という事実である。そして落ちた人は「まだ笑顔が足りなかったのだろうか」「結論から話せていなかったのだろうか」と、同じ軸の上でさらに努力を積み増そうとする。これは、効かない薬の用量を増やしているのと同じだ。

私の結論はこうである。結論ファースト・笑顔・ハキハキは、合格の必要条件ではなく、必要条件を満たした人に対する加点要素である。 そして必要条件は別のところにある。3点セット、すなわち①御社の業務、②御社で活躍できる素養、③御社を辞めない理由を、論理的に提示できているかどうかである。

この階層構造を取り違えると、努力の全量が加点レイヤーに投下され、必要条件レイヤーが空白のまま選考が終わる。定番アドバイスの最大の害は、内容が間違っていることではなく、階層を明示しないことにある。

選考には3つのレイヤーがある

面接に至るまで、そして面接の中で、評価は次の3層で動いていると私は整理している。

レイヤー0: 足切り(書類選考) 学歴とWebテストのスコアという定量指標で機械的に処理される層。数千通のESを限られた採用メンバーで精読することは不可能なので、ここは定量で切られる。笑顔もハキハキも、そもそも観測されない。ESの本文すら、この段階ではほぼ読まれていない。

レイヤー1: 必要条件(合格理由の材料) 面接官が組織に対して合格を出した理由を説明できるだけの材料が、受験者から渡されているかどうかの層。ここが3点セットである。この層が空白だと、面接官は報告書に書く文章を持たないまま面接を終えることになる。

レイヤー2: 加点(伝達効率と印象) 結論ファースト、笑顔、ハキハキが属する層。レイヤー1で渡された材料が、どれだけ正確に、どれだけ好意的に受け取られるかを左右する。

そして重要なのは、レイヤー2はレイヤー1の掛け算の係数であって、加算項ではないということだ。レイヤー1がゼロなら、レイヤー2に何を掛けてもゼロである。

なぜレイヤー2は合格理由にならないのか

これは、面接官が置かれている立場から導ける。

面接官は、面接が終わったあと、人事部あるいは自部門に対して、その学生の合否と判断理由を報告している。私は現職で採用活動に携わっており、この運用を内側から見ている。面接官は「自分が好きかどうか」で決めているのではない。「上司や人事に説明できる理由があるかどうか」で決めている。

そうすると、報告に載せられる形式が問われる。「なんとなく良かった」は報告として成立しない。上長から「で、なぜ通したのか」と聞かれて答えられないからである。したがって、面接官が組織に説明できる形式は論理しかない。

ここでレイヤー2の3つを、報告文に載せてみる。

  • 「結論から話せていました」
  • 「笑顔でした」
  • 「ハキハキしていました」

どれも、合格を出す理由にならない。上長は「それで、この学生はうちで活躍するのか」と聞き返すだけである。「明るくて感じが良かった」は、「なんとなく良かった」の言い換えにすぎない。 報告可能な形式に載らないものは、最終的な意思決定に残らない。

一方、レイヤー1は報告文に直接載る。

  • 「当社の◯◯という業務を理解しており、そこで求められる△△という素養を、学生時代の□□という経験で示せていた」
  • 「中期経営計画の方向性と本人のキャリアの方向性が一致しており、早期離職のリスクは低いと判断した」

この2文があれば、面接官は上長に説明できる。面接とは、この2文を面接官に渡す時間である。

Q7と矛盾していないか — フェーズによって効くレイヤーが違う

ここで、注意深い読者は矛盾に気づくはずである。

私は別の記事で、「面接の最初の1〜2分において、面接官に届いているのは話の内容ではなく、準備度合いと自信の有無という非言語情報だけである」と書いた。冒頭に限れば、内容が完璧でなくても自信をもって話せればプラスに転ぶ、とまで書いた。

ところが本記事では、非言語は加点にすぎず、合否を決めるのは論理だと言っている。一見すると、この2つは正面から衝突している。

衝突していない。時間帯によって、面接官が受信しているレイヤーが違うからである。 面接を3つのフェーズに分けると整理できる。

フェーズA: 冒頭の1〜2分(面接官は読解中)

面接官は手元のESに目を落とし、この受験者が何者かを把握している。処理リソースの大半は読解に割かれており、聴解には割かれていない。したがって、この区間で受信されているのは非言語チャネルの情報だけである。

この区間では、非言語が唯一の入力である。 だから非言語への投資対効果が最大になる。Q7で述べたのはこのフェーズの話だ。

フェーズB: 質疑・深掘り(面接官は聴解中)

面接官がESを読み終え、質問を始めた瞬間から、面接は内容の勝負に切り替わる。ここで問われるのは3点セットであり、論理である。

この区間では、非言語の役割が変わる。 加点そのものではなく、「伝達コストの削減」に移る。ハキハキ話せば聞き返しが減る。結論から話せば面接官が話の構造を掴みやすい。笑顔でいれば面接官が質問しやすい雰囲気になる。いずれも、レイヤー1の材料を目減りさせずに届けるための潤滑油である。潤滑油は、油そのものが商品なのではない。

フェーズC: 面接後の報告(面接官は説明中)

面接官が組織に対して合否の理由を説明する場面。ここに残るのは論理だけである。非言語はこの時点で消滅している。

この3フェーズで整理すると、こう言える。非言語は、フェーズAで印象の初期値を作り、フェーズBで伝達ロスを減らす。しかしフェーズCには持ち越されない。 合否を決めるのはフェーズCに持ち越されるもの、すなわち論理である。

別の言い方をすれば、非言語はフローであり、論理はストックである。面接官の記憶に残り、報告書に転記されるのは後者だけだ。Q7は「フェーズAでは非言語しか届かない」と言っており、本記事は「フェーズCでは非言語は残らない」と言っている。異なるフェーズについての記述なので、矛盾は生じない。

機能する条件と機能しない条件

以上を踏まえて、質問に直接答える。

機能する条件

  • 3点セットが用意できており、合格理由の材料が既に手元にあるとき。このとき、レイヤー2は材料の伝達精度を上げる係数として素直に効く。
  • 冒頭の1〜2分(フェーズA)。ここは非言語しか届いていないので、投資対効果が最大化する。
  • 面接官が複数いる集団面接など、聞き手の注意が分散している場面。伝達コストの削減効果が相対的に大きくなる。

機能しない条件

  • 3点セットが未整備のとき。渡すべき材料がないところに潤滑油だけ注いでも、面接官は報告文を書けない。
  • 話し方に意識を割いた結果、内容の出力量が落ちるとき。これは次節で詳述するが、実務上いちばん起きやすい失敗である。
  • 面接官が「なぜ?」を重ねてくる深掘りの局面。ここで問われているのは思考の階層の深さであり、話し方の滑らかさではない。

「結論ファースト」の副作用について

3つのうち、結論ファーストだけは他の2つと性質が違うので、単独で扱う必要がある。笑顔とハキハキは態度の話だが、結論ファーストは発話の構造を拘束する技法だからである。

私は、話し方を過度に気にする必要はないと考えている。相手に分かりやすく伝える技術としてPREP法のようなものは必要だが、それは圧倒的に内容の下位に置かれるべきものだ。

実務でも、すべての質問に対して的確に結論から答えることは現実的に難しい。難しい問いほど、結論が思考の途中でしか固まらない。それを無理に「結論から言うと」で始めようとすると、まだ固まっていない結論を口に出すことになり、そのあとの説明が結論を裏切りはじめる。あるいは、結論ファーストの型に入る回答だけを選んで話すようになり、本来伝えたかった内容が出力されないまま終わる。

話し方の型で自分の思考に制限をかけ、伝えたいことが全量出ないほうが、はるかに大きな問題である。

だから私は、「少し長くなるのですが」「うまくまとまらないかもしれませんが」といった前置きを置いたうえで、自分の考えを言い切るほうがよいと考えている。この前置きは、結論ファーストの放棄ではない。これから構造的に話す、という予告であり、聞き手に対して「今から少し長い入力が来る」という心の準備を渡す機能を持つ。

つまり、結論ファーストの本質は「結論を先に言う」という順序そのものではなく、聞き手の処理負荷を下げることにある。目的が処理負荷の低減であるなら、前置きによる予告も、同じ目的を果たす代替手段として成立する。順序は手段であって、目的ではない。

なお、話し方は面接を繰り返したり、話す内容を文章化していったりする過程で自然に改善される。ここに独立した練習時間を割く必要はないというのが、私の実感である。

実行の順序

やるべきことの順序は、階層の順序に一致する。

  1. レイヤー1を作り切る。 志望企業・職種について、①御社の業務、②御社で活躍できる素養、③御社を辞めない理由を書き出す。②の材料は、説明会や逆質問で「一番優秀だと思う人の特徴を教えてほしい」と聞くのが最も効率がよい。業務の性質を踏まえた優秀さの定義が、そのまま手に入る。
  2. レイヤー1をESと回答に落とす。 ガクチカと自己PRは②の証明、志望動機は③の証明として配置する。
  3. ここまで終わってから、レイヤー2に手を付ける。 声に出して話し、録音を聞き、詰まる箇所を潰す。冒頭の1〜2分だけは、他より丁寧に仕上げる。
  4. レイヤー2に独立した練習期間を設けない。 面接の回数と文章化の量が、自動的にここを改善する。

チェックの仕方も示しておく。自分の回答を一度、「面接官が上長に報告する一文」に翻訳してみるとよい。「この学生は◯◯だから通した」の◯◯に、自分の回答から取り出した言葉を入れる。ここに入る言葉が「ハキハキしていた」しか出てこないなら、レイヤー1が空白だということだ。

この整理が当てはまらない選考

最後に限界を書く。レイヤー2が必要条件に格上げされる選考は、実際に存在する。

私は、ある人材系ベンチャーの選考で、3日間のオンライン形式のグループディスカッションに参加したことがある。9人1グループという構成で、自分の発言が本当に議論に必要なのか確信が持てず、ほとんど発言できなかった。結果は不合格だった。

いま振り返ると、あの選考で評価されていたのは、議論の質そのものよりも、先頭に立って場を取る人物だった。能力の高低とはやや独立に、目立った人が通っていた。あの場では「ハキハキ」「前に出る」という、私がここまで加点要素と呼んできたものが、事実上の必要条件として機能していた。

同種のことは、営業職の一部の選考でも起きうると私は考えている。職種のペルソナそのものに「明るさ」「押しの強さ」が含まれている場合、それは非言語の加点ではなく、②御社で活躍できる素養の直接的な証明として読まれる。この場合、笑顔とハキハキはレイヤー2ではなくレイヤー1の要素に位置を変える。

ただし、これは本記事の主張の反例ではなく、むしろ補強である。その場合でも、評価されているのは「非言語だから」ではなく「その職種で活躍する素養の証明になっているから」である。 階層構造そのものは動いていない。何がレイヤー1に入るかが、職種によって変わっているだけだ。

そしてもう一点、正直に書いておく。そういう選考スタイルの企業が自分に合うかどうかは、内定するかどうかとは別の論点である。無理に目立って通った先に、目立ち続けることを求められる環境が待っている。内定を目的関数に置いた最適解と、入社後のミスマッチの回避は、同じ答えを出すとは限らない。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 結論ファースト・笑顔・ハキハキを言われたとおりにやっていた。それでも落ちるので、同じことをさらに練習していた。

読んだあとのあなた その3つが必要条件ではなく加点要素だと分かっている。必要条件(3点セット)が別にあることを知っているので、時間の投下先を変えられる。

明日からやること

  • やめる: 笑顔とハキハキの練習量を増やすこと
  • 始める: 自分の回答を「この学生は◯◯だから通した」の一文に翻訳してみること。◯◯に入る言葉が出てこなければ、直すのは話し方ではない
前の記事最初の1〜2分に届いているのは、話の内容ではない