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面接解体新書第1弾|転機の解剖

グループディスカッションで評価されるのは、アイデアではなく進行である

グループディスカッションで、何を発言すればいいか分からない。

良いアイデアを出さなければ、と思う。けれど思いつかない。思いついても、たいてい誰かが先に似たことを言っている。結局、当たり障りのない相槌だけで30分が終わる。

この記事の結論は、その前提が間違っているということである。評価されているのは、アイデアを出す人ではない。議論を進める人である。 私はこれを、9人のGDでほとんど発言できずに落ちた経験から学んだ。


きっかけ ― 九人のグループで、ほとんど発言できなかった

四つ目の気づきのきっかけは、三日間のオンラインインターンシップで行われたグループディスカッション(以下GD)である。九人一グループという、かなり大きな単位で実施された。

このとき私は、自分の発言が本当に必要なのか確信が持てず、ほとんど発言できなかった。 九人もいると、自分が言おうとしたことは誰かがすでに言っているように思えるし、話の流れを断ち切ってまで発言する価値があるのか判断がつかない。結果として、私は沈黙したまま三日間を終え、落ちた。

そして、通っていた人たちを見て気づいた。評価されていたのは、必ずしも能力が高い人ではなく、先頭に立って議論をリードする人だった。

構造 ― なぜ良いアイデアは採用理由にならないのか

この観測を、面接の構造から説明し直す。

採用側の観点に立つと、良いアイデアを出したからといって、採用する理由にはならない。

なぜか。二つの理由がある。

第一に、アイデアの質はテーマに依存する。 ある学生が「電車の混雑を解消する良い案」を出したとして、それは入社後の何を予測するのか。たまたまそのテーマに詳しかっただけかもしれない。たまたま良い発想が浮かんだだけかもしれない。再現性がないものは、入社後の活躍の根拠にならない。面接官は、これを報告書に書けない。「良いアイデアを出したので通しました」と書いて、上司に「それで、入社後にどう活躍するのですか」と聞かれたら答えられない。

第二に、オンラインで大人数の場合、アイデアを出しても印象に残らない。 アイデアを募る場面で発言したところで、他に何人も同じようなことを発言する。九人いれば、同種のアイデアが三つ四つ重なるのは当然である。埋もれる。

もちろん、まったく発言しないよりは、アイデアを出す方がよい。発言ゼロは判断材料ゼロであり、私が落ちた理由はまさにそこにある。しかし、アイデアの質を競うことに投資しても、リターンは小さい。

では、議論を進める能力はどうか。

これは、まったく性質が違う。

第一に、テーマに依存しない。 議論の停滞を検知し、時間配分を管理し、話がずれたときに戻す。この能力は、テーマが何であっても発揮できる。つまり再現性がある

第二に、実際の仕事で、若手のうちから発揮できる場が多い。 会議の進行、論点の整理、関係者間の調整。新人が最初に任される仕事の多くが、この能力を使う。つまり、入社後の活躍を直接予測する。

第三に、行動として観察可能である。 「議論が課題特定から逸れたときに、本人が指摘して軌道を戻した」は、面接官が見た事実であり、そのまま報告書に書ける。アイデアの質と違って、解釈を挟まずに記述できる。

したがって、GDで評価される人材は、革新的なアイデアを出せる人ではなく、議論を進められる人である。 これが第四の気づきである。

GDの標準的な流れを頭に入れておく

議論を進めるには、まず議論がどう進むべきかを知っていなければならない。大抵の場合、GDは次の流れで進む。

  1. 役割決定(司会、書記、タイムキーパーなど)
  2. 段取り・時間配分の設定
  3. 前提のすり合わせ(テーマの言葉の定義、議論の範囲)
  4. 課題特定
  5. 解決策の発散(アイデア出し)
  6. コスト・実現可能性を踏まえた解決策の決定
  7. 結論出し

これを三十分程度で進めるケースが大半である。七つのフェーズを三十分で回すということは、一フェーズあたり平均四分強しかない。この時間感覚を最初に共有できるかどうかで、議論の質は大きく変わる。

実際に起きること ― 二種類の逸脱

流れを知っていると、実際の議論で何が起きているかが見えるようになる。典型的な逸脱は二種類ある。

一つ目は、フェーズを先取りする発言である。 課題特定の時間に、解決策のアイデアを出してしまう人が出てくる。悪気はない。良い案を思いついたから言いたくなるのである。しかしこれをやると、課題が固まる前に解決策の議論が始まり、後になって「そもそも何を解決しようとしていたのか」が曖昧になる。

二つ目は、確定した前提を後から動かす発言である。 議論が進んでから「そもそも、この言葉の定義って〜ですよね」と前提を変えようとする人が出てくる。これをやられると、それまでの議論が全部無効になる。

どちらに対しても、対処は同じである。

今はこの時間なので、その話題は次のフェーズで考えましょう。

これを言えるかどうかが、GDにおける最大の差になる。この一言は、内容についての知識をまったく必要としない。テーマが何であっても言える。そして、これを言った人は、面接官の目に「議論を管理していた人」として映る。

コツ1 ― 議論の流れと各フェーズの結論を、紙に書く

具体的なコツとして、私が最も重要だと考えているのはこれである。議論の流れと、各フェーズで話したことを、紙に書くこと。

なぜこれが効くのか。

ずれは、記憶では検知できないからである。

議論が逸脱していることに気づくためには、「今どのフェーズにいるか」と「これまでに何が決まったか」を、常に参照できる状態にしておかなければならない。三十分の議論を頭の中だけで追いかけながら、同時に自分の発言も考えるのは、現実的に不可能である。

書いてあれば、判定は機械的になる。誰かが発言したとき、それが手元のどのフェーズに属する内容かを見ればよい。属さないフェーズの発言であれば、それが逸脱である。この判定を、思考力ではなく参照作業に落とせるのが、紙に書くことの本質的な効果である。

副次的な効果も大きい。書いている人は、自然と「まとめる人」になる。議論が混乱したときに「今までの整理をすると」と言えるのは、手元に記録がある人だけである。そして議論の終盤、結論を出す段階になると、記録を持っている人が主導権を握る。書記という役割は、地味に見えて、実は最も評価されやすいポジションである可能性がある。

コツ2 ― 最初に自分で結論を決めてしまう

もう一つのコツは、やや大胆に聞こえるかもしれない。議論が始まる前に、自分の中で結論を決めてしまうことである。

たとえば「電車の満員率を下げるには」というお題が出たとする。ここで、結論を「通勤ラッシュの時間を避けて電車に乗ってもらう施策」に決め打ちしてしまう。あとは、それに沿って前提と解決策を決めていけばよい。

これが許される理由は明快である。このようなテーマは、すでに何回も議論し尽くされている。 三十分の議論で、世の中の誰も思いつかなかった解決策が出てくることはない。だから、ぱっと思いつくような当たり前の結論でよい。

そして重要なのは、評価されるのは結論の新規性ではなく、当たり前の結論を論理的に説明する能力であるということである。

結論を先に持っておくことの効果は、議論の進行が圧倒的に楽になることである。前提のすり合わせの段階で「今回は首都圏の通勤電車、朝の時間帯に絞りましょう」と言える。課題特定の段階で「需要が特定の時間帯に集中していることが根本的な課題ですね」と言える。行き先を知っている人は、道案内ができる。

ただし、運用上の注意がある。結論を決め打ちすることと、それを押し付けることは違う。「私の結論はこれです、これでいきましょう」と言えば、他のメンバーは反発する。そして、他人の意見を聞かない人という印象は、面接官にとって明確な減点材料になる。

正しい運用は、その結論に至る道筋を、グループ全体の合意として作っていくことである。前提の設定、課題の絞り込みという上流の段階で、自分が想定する方向に議論の枠を作る。枠が決まれば、結論はグループ全員で自然に導き出したものになる。これが「議論をコントロールする」ということの中身である。この運用面の記述は私自身の解釈を含むが、決め打ちが機能するのは、この段取りとセットになっている場合だけだと考えている。

なぜ仕事でも同じ構造なのか ― 伝言ゲームとしての組織

最後に、なぜGDで「当たり前の結論を論理的に説明する能力」が評価されるのかを、仕事の構造から説明したい。ここが、この気づきが面接全体とつながる部分である。

仕事の現場では、自分が説明した相手(直属の上位者)が、伝言ゲーム形式でさらに上位の社員に説明することになる。課長に説明したことが部長に伝わり、部長が説明したことが役員に伝わる。

ということは、自分の仕事は「正しい結論を出すこと」だけでは終わらない。上位者が説明するための根拠を用意してあげることが仕事に含まれている。

そして、結論というものは、たいてい上に行くほど当たり前に見える。役員が聞けば「それはそうだろう」という結論であることが多い。しかし、当たり前に見える結論であっても、組織の意思決定として承認するには理由が必要になる。その理由を用意するのが、実務における仕事の中身である。

GDで見られているのは、まさにこの能力である。斬新な結論を出す能力ではなく、当たり前の結論に対して、他人が使える形の根拠を組み立てる能力である。

そして気づいてほしい。これは面接そのものと同じ構造である。

面接官もまた、あなたの合格理由を人事部に説明する「上位者」である。あなたの仕事は、面接官が上に説明するための根拠を用意することである。GDも、面接も、そして入社後の仕事も、すべて「他人が自分の判断を説明するための材料を作る」という同じ形をしている。


四つの気づきが収束する一点

四つの気づきは、別々のきっかけから、別々の場面で得られたものである。しかし、構造で整理すると、すべてが一つの命題に収束する。

面接とは、面接官が組織に提出する「合格を出した理由」の報告文を、こちらで書いて渡す作業である。

この一点から、四つを見直してみる。

第一の気づき(発言のコントロール)は、報告文に余計な減点材料を混ぜないための技術である。 面接官の判断材料はESと自分の発言だけであり、減点は事実として残る。だから、証明すべきことを証明し終えたら、それ以上は話さない。面接官の発言を肯定し、自分の話す時間を最小限にするのは、報告文をきれいなまま保つための作業である。

第二の気づき(優秀な人の定義を聞く)は、報告文の本体を手に入れる作業である。 「なぜこの学生は当社で活躍するのか」という部分の中身を、社員本人から調達する。①業務の性質から②活躍する素養を導く論理を、そのまま受け取って、自分の経験に接続する。

第三の気づき(IR資料との一致)は、報告文の「辞めない理由」の部分を作る作業である。 採用は投資であり、活躍することと定着することの両方が必要になる。中長期の方向の一致は、意志ではなく構造として説明できるので、報告文に書ける形式になる。

第四の気づき(GDの進行)は、報告文に書ける具体的な行動を残す作業である。 アイデアの質は解釈を経由しないと報告できないが、「議論の逸脱を検知して軌道を戻した」は事実として記述できる。しかも、その能力は入社後の業務に直結するので、活躍の予測につながる。

四つとも、主語は自分ではない。面接官である。

面接対策とは、自分を良く見せる訓練ではない。他人が自分について書く文章を、あらかじめ代筆しておく作業である。この視点の転換が、私にとって最大の「コツを掴んだ瞬間」だった。

その報告文には形式がある

そして、面接官に渡すべき報告文には、決まった形式がある。証明すべきものは、突き詰めると三点しかない。

  1. ①御社の業務 ― その会社・その職種で実際に何が行われているかの理解
  2. ②御社で活躍できる素養 ― ①を踏まえたとき、活躍する人が持っている資質を、自分が持っているという証明
  3. ③御社を辞めない理由 ― 中長期の自分の方向性と、会社の方向性が一致しているという証明

本ナレッジでは、これを3点セットと呼ぶ。

第二の気づきで手に入れた「優秀な人の定義」は、①と②を作る材料である。第三の気づきで扱った中期経営計画との一致は、③そのものである。第一の気づきの発言コントロールは、①②③を渡し終えた後に、それを壊さないための技術である。そして第四の気づきのGDは、②を行動として実演する場である。

ES、自己PR、ガクチカ、志望動機、逆質問、そしてケース面接に至るまで、選考のすべての要素は、この3点のいずれかを証明するための手段として位置づけられる。

四つの気づきは、この3点セットという一つの器に、すべて収まる。

そして最後に、この方法論の性質についてもう一度触れておきたい。ここまで述べてきたのは、内定を取ることを目的関数に置いた場合の最適化である。志望職種のペルソナに自分を寄せ、面接官が報告しやすい形に自分を整形する。この方法は、内定という一点については有効だと私は考えている。しかし、入社後にその職場で自分が幸福に働けるかという問いには、この方法論は答えていない。二つは別の問題である。その区別を持ったうえで、使ってほしい。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 良いアイデアを出そうとして、発言のハードルを自分で上げていた。

読んだあとのあなた 議論を進める役に回ればよいと分かっている。テーマに依存せず、どのお題でも同じことができる。

明日からやること

  • やめる: 斬新なアイデアを探すこと
  • 始める: GDの標準的なフェーズを紙に書き出し、いまどのフェーズかを口に出して確認する役をとること
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