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面接解体新書第1弾|転機の解剖

自分の解釈で答えるのをやめ、内定から逆算する — 同じ質問への回答はこう変わった

同じ経験を話しているのに、通るときと落ちるときがある。

エピソードは変えていない。話す長さも似たようなものだ。それなのに結果が割れる。何が違ったのかを、自分で説明できない。 説明できないから、次に何を直せばいいかも決まらない。

この記事では、私の自己PRとガクチカのBefore/Afterを、実際の文面で並べる。使った素材は前も後も同じサークル活動である。 変わったのは、たった一箇所だけだった。


変わったのは回答ではなく、回答を作る順序である

コツを掴む前と後で、私の自己PRとガクチカは別物になった。ただし、変わったのは文章の巧拙ではない。エピソードの派手さでもない。使った素材は、前も後も同じサークル活動である。

変わったのは、回答を作りはじめる地点である。

  • Before: 自分の中を探して、自分が自分をどう解釈しているかを述べていた
  • After: 内定するために必要な情報から逆算して、そこに向かって自分の経験を配置していた

この一点だけである。そして、この一点で結果が変わった。以下、実際の回答をできるだけ当時に近い形で再現しながら、何がどう変わったのかを分解する。

具体例: SIerのプロジェクトマネージャーを志望する場合

設定を固定して比較する。志望はSIer、将来はプロジェクトマネージャー(以下PM)になりたい、というケースである。

Before — 自分の解釈に従って答えていた頃

自己PR

私の強みはコミュニケーション能力です。誰とでもすぐに打ち解けることができ、初対面の相手ともすぐに関係を築けます。サークルでも、学年や立場を問わず幅広く声をかけ、多くの人と信頼関係を作ってきました。この強みを活かして、御社でもお客様や社内のメンバーと良好な関係を築いていきたいと考えています。

読んでいて、特に破綻はない。日本語としては通っている。それでも、これは落ちる回答である。

なぜかを説明する前に、この回答がどうやって作られたかを見てほしい。私は当時、次のように考えていた。

  1. 自己PRを書かなければならない
  2. 自分の長所は何だろう
  3. 人と話すのは苦ではないし、友人も多い
  4. だから「コミュニケーション能力」だろう
  5. その根拠になるエピソードを探そう

出発点が「自分の中」にある。自分が自分をどう解釈しているかを、そのまま提出している

After — 内定に必要な情報から逆算して答えるようになってから

前段の作業(回答を書く前にやること)

PMとして活躍するために必要な素養は何か?

→ 複数のステークホルダー(顧客・協力会社・自社の開発メンバー)の間で、利害が対立する場面が常に発生する。全員の要求をそのまま満たすことは原理的に不可能で、どこかで調整と合意形成が必要になる。

→ したがって、PMとして活躍する人が持っているのは「ステークホルダー間の合意形成能力」である。

自己PR

私の強みは、複数人の異なる考えや意見を踏まえたうえで、全員が受け入れられる折衷案を組み立てられることです。立場が違えば主張が食い違うのは当然だと考えており、対立が起きたときに、どちらかを説得するのではなく、双方の主張の背景にある目的を切り分けて、両立できる形を探すようにしています。

ガクチカ

サークルの代表を務めていたとき、部署間で方針が真っ二つに割れたことがありました。私はまず、それぞれの部署の担当者に個別にヒアリングを行い、表面的な主張ではなく、その裏にある「何を守りたいのか」を聞き出しました。その結果、対立していたのは手段であって目的ではないことが分かったため、両方の目的を満たす折衷案を提示し、全員が納得できる落としどころを見つけることができました。

この回答がどうやって作られたかを見る。

  1. 志望職種はPMである
  2. PMの業務では何が起きるか(=①御社の業務)
  3. その業務で成果を出す人は何を持っているか(=②御社で活躍できる素養)
  4. その素養を、自分のどの経験で証明できるか
  5. その経験を、素養が伝わる粒度で語る

出発点が「相手が欲しい情報」にある。自分の中を探すのは、4番目になってからである。

なぜBeforeでは通らないのか

Beforeの回答が落ちる理由は、内容が悪いからではない。面接官が組織に報告する文章に変換できないからである。

面接官は面接が終わったあと、人事や自部門に対して合否とその理由を報告している。Beforeの自己PRを受け取った面接官が書ける報告文は、せいぜいこうなる。

「コミュニケーション能力が高いとのこと。感じの良い学生だった」

これを読んだ上長は、「で、うちのPMとして活躍するのか」と聞き返すしかない。面接官はこの問いに答えられない。したがって、面接官は合格を出せない。

一方、Afterの回答を受け取った面接官は、こう書ける。

「当社のPM業務ではステークホルダー間の調整が中心になるが、本人はその点を理解したうえで、サークルでの部署間対立を、目的と手段を切り分けて合意形成した経験を挙げていた。当社で活躍する可能性は高いと判断した」

この文章は、そのまま報告として成立する。Before/Afterの本質的な差は、面接官に「報告文の下書き」を渡せているかどうかである。

3つの具体的な変化

Before/Afterを並べると、変化は3点に分解できる。

変化1: 強みの粒度が、汎用語から業務語に変わった

「コミュニケーション能力」は汎用語である。営業でもエンジニアでも研究職でも同じ言葉が使える。どの職種にも当てはまる言葉は、どの職種の合格理由にもならない。

「ステークホルダー間の合意形成」は業務語である。この言葉を選んだ瞬間、それはPMという職種を名指ししている。面接官は「この学生はうちの仕事が何をする仕事か分かっている」と受け取る。①御社の業務の理解が、②御社で活躍できる素養の証明と同時に成立している。

変化2: 主張の方向が、「私はこういう人間だ」から「私は御社で成果を出す」に変わった

Beforeは自己紹介である。Afterは提案である。企業にとって採用は投資であり、投資判断に必要なのは「この人物に投じた資源が回収できるか」という情報である。自己紹介はその情報にならない。

変化3: エピソードの切り取り方が変わった

面白いのは、使った経験そのものは変わっていないという点である。同じサークル、同じ期間、同じ出来事の集合から取っている。

Beforeでは「学年や立場を問わず幅広く声をかけた」という場面を切り取っていた。Afterでは「部署間で方針が割れたときに合意形成した」という場面を切り取っている。どちらも実際にあったことである。証明したい素養が先に決まっているから、その素養が最も濃く出ている場面を選べる。

エピソードを盛る必要がないのは、このためである。 素養を先に決めておけば、既にある経験の中から該当する場面を選ぶだけで足りる。捏造が必要になるのは、素養を決めずにエピソードから話しはじめ、後から意味づけを探すからだ。

「逆算」を実際にやるための手順

この転換は、才能ではなく手順である。以下の順に埋めれば、誰でも同じことができる。

手順1: 志望職種の業務内容を、動詞で3つ書き出す 「PMとして計画を立てる」「顧客と協力会社の要求を調整する」「進捗の遅れに対処する」など。パンフレットの美辞麗句ではなく、日々何をしている人なのかを動詞で書く。

手順2: それぞれの業務で「難しいこと」は何かを考える 計画を立てるのは難しくない。難しいのは、前提が動くなかで計画を維持することである。ここを特定する。

手順3: その難しさを乗り越えている人が持っているものを、一語で定義する これが②御社で活躍できる素養になる。ここで詰まったら、自分で考えずに聞けばよい。説明会や逆質問で「一番優秀だと思う方の特徴を教えてください」と質問すると、業務の性質を踏まえた優秀さの定義がそのまま手に入る。自分の想像より、現場の社員の回答のほうが正確である。

手順4: その素養が最も濃く出ている自分の経験を、記憶の中から探す ここで初めて自分の中を見る。「一番すごい経験」を探すのではなく、「その素養が出ている場面」を探す。地味でよい。

手順5: その経験を、素養が伝わる粒度で語り直す 何をしたかではなく、なぜそう判断したかを入れる。判断の理由が入っていないと、素養ではなく偶然に見える。

手順6: 自分の回答を「面接官の報告文」に翻訳してみる 「この学生は◯◯だから通した」の◯◯に、自分の回答から取り出した言葉を入れてみる。ここに入る言葉が汎用語しか出てこないなら、手順1から作り直す。

この方法の限界

正直に限界も書いておく。

第一に、この方法は志望職種が決まっていないと動かない。①御社の業務が空白のままでは、②を定義できない。逆に言えば、志望職種が決まっていない段階で自己PRを磨いても、磨く方向が定まらないので徒労になる。企業研究より先に、職種の解像度を上げるべきである。

第二に、これは内定を目的関数に置いた場合の最適解である。自分の本当の強みが何かを知る作業とは別物であり、両者は一致するとは限らない。私は当時、内定を取ることを最優先に置いてこの方法を採ったが、「自分に向いている仕事は何か」という問いは、これとは別に自分で持っておくべきだと考えている。

第三に、素養の定義を誤ると、全体が誤った方向に最適化される。手順3で自分の想像に頼らず、現場社員に聞くことを強く勧めるのはこのためである。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 自分の中を探して答えを作っていた。だから、通った理由も落ちた理由も分からなかった。

読んだあとのあなた 内定に必要な情報から逆算して答えを作れる。結果が再現するので、次に直す場所も自分で決められる。

明日からやること

  • やめる: 「自分の強みは何だろう」から考え始めること
  • 始める: 志望職種の業務を動詞で3つ書き出し、そこから「活躍する人が持っているもの」を先に決めること。自分の経験を探すのは、そのあと
前の記事グループディスカッションで評価されるのは、アイデアではなく進行である