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面接解体新書第2弾|面接の評価構造

回答は抽象から作る — 「話すことが思いつかない」のは、具体から探しに行っているからである

話すことが思いつかない。

自己分析をしても、結局何を語ればいいのかが決まらない。エピソードを書き出してはみたものの、どれも決め手に欠ける気がして、選べないまま時間だけが過ぎる。

これは、経験が足りないから起きているのではない。 探し方の順序が逆になっているから起きている。この記事では、その順序を入れ替える。


型は「話す順番」ではなく「作る順番」である

回答の型というと、たいていはPREP法(結論→理由→具体例→結論)のような、話す順番の話になる。それも必要ではあるが、私が重要だと考えているのはそこではない。

話す順番より、作る順番のほうが結果を左右する。

そして私の作る順番は、一貫して一つである。

抽象(自分が寄せたいペルソナ/自分が活躍する理由)を先に決め、それを支える具体(経験・エピソード)を後から拾う。

逆はやらない。具体から探しに行くと、回答は出てこない。この記事では、なぜそうなるのかを構造として説明する。

出発点: 面接は「自分が御社で活躍することを証明する場」である

作る順番を決める前に、何を作ろうとしているのかを確定させる必要がある。

面接は、自分を知ってもらう場ではない。面接官が組織に対して「この人物を通した理由」を報告できるようにするための場である。そして報告に載る理由は、突き詰めれば「この人物は当社で活躍する可能性が高い」という一点である。

とすると、回答を作るという作業は、次のように定義できる。

「私は御社で活躍する」という命題を、具体的な経験によって証明する作業

証明である以上、先に証明したい命題がなければ、作業は始まらない。 数学の証明で、結論を決めずに補題を集める人はいない。集めた補題が何のためのものか判定できないからである。

これが、抽象を先に決める理由の第一である。

手順: 4ステップ

私が実際に踏んでいた順番は、次の4つである。

ステップ1: 自分が寄せたいペルソナを決める

志望職種の業務を踏まえて、「この職種で活躍している人は、どういう人物か」を一文で定義する。

  • SIerのプロジェクトマネージャー → 立場の違う関係者の間で合意を作れる人
  • 法人営業 → 失敗を恐れず試行回数を積める人
  • コンサルタント → 当たり前の結論を、当たり前の理由で証明しきれる人

これが、そのまま②御社で活躍できる素養になる。自分で想像するより、説明会や逆質問で「一番優秀だと思う方の特徴を教えてください」と聞いてしまうのが速く、かつ正確である。

ステップ2: そのペルソナを、抽象的な結論の言葉に翻訳する

ペルソナは人物像なので、そのままでは回答の言葉にならない。面接の回答の冒頭に置ける、抽象的な一文に変換する。

  • 「立場の違う関係者の間で合意を作れる人」→ 「私の強みは、複数人の異なる考えを踏まえて、全員が受け入れられる折衷案を組み立てられることです」

ここで作った一文が、以降のすべての回答の「結論」になる。

ステップ3: その抽象を導けそうな経験を、記憶の中から拾う

ここで初めて、自分の中を見る。「一番すごい経験」を探すのではなく、「その抽象が最も濃く出ている場面」を探す。

このとき、探す対象が明確に定義されているので、記憶の検索は一瞬で終わる。「合意形成をした場面」と決まっていれば、それに該当する記憶だけが浮かんでくる。

ステップ4: 拾った具体を、抽象が伝わる粒度で語り直す

事実の羅列ではなく、判断の理由を入れる。「両者にヒアリングした」だけでは行動の記述だが、「表面の主張ではなく、その裏にある目的を切り分ける必要があると考えたので、個別にヒアリングした」とすれば、素養の記述になる。

なぜ「具体から探す」と回答が出てこないのか

ここが本記事の中心である。多くの人が「話すことがない」「ガクチカが思いつかない」と言うが、私の見方では、経験が足りないのではなく、探索の順序が逆になっている。

探索空間の大きさの問題である

具体から探すというのは、次のような作業である。

自分の20年分の記憶を全部並べて、その中から「面接で評価されそうなもの」を選ぶ

この作業には、決定的な欠陥が2つある。

欠陥1: 探索空間が大きすぎる 記憶の総量は膨大である。しかも構造化されていない。ここから何かを選ぶには、全件を走査する必要がある。人間の作業として現実的ではない。

欠陥2: 評価関数が存在しない より深刻なのはこちらである。「面接で評価されそうなもの」という基準は、それ自体では何も判定できない。何を証明したいかが決まっていないので、ある経験が使えるかどうかを判定する関数が存在しない。

判定できないから、選べない。選べないから、「思いつかない」という感覚になる。実際には思いつかないのではなく、思いついた候補を採否判定できないまま捨てているのである。

抽象から探すと、両方の問題が消える

抽象を先に決めると、探索は次のように変わる。

「合意形成をした場面」に該当する記憶だけを、記憶の中から呼び出す

探索空間が桁違いに小さくなる。 20年分の記憶ではなく、特定の性質を持つ場面だけを検索すればよい。人間の記憶は連想検索なので、キーワードを与えられれば該当する場面を勝手に引き出してくる。

そして評価関数が明確に存在する。 「この経験は、合意形成の素養を示しているか」というイエス・ノーで判定できる。判定できるから、選べる。

これが、順序を変えるだけで「話すことがない」状態が解消する理由である。問題は素材の不足ではなく、検索クエリの不在だった。

PREP法との接続 — なぜ結論は抽象になるのか

ここで、話す順番の話に戻る。

PREP法に従うと、回答の最初に来るのは結論である。そして注目すべきは、結論というのは、その性質上ほぼ必ず抽象的な表現になるという点である。

「私の強みは、複数人の異なる考えを踏まえて折衷案を組み立てられることです」——これは抽象である。特定の出来事を指していない。特定の出来事を指した瞬間、それは結論ではなく具体例になる。

つまり、こういうことになる。

PREP法の「P(結論)」の位置に入るものは、抽象である。

そして抽象は、ペルソナ設計によって先に決めておくべきものである。

したがって、ペルソナ設計とPREP法は、同じ作業の別の側面である。

多くの人がPREP法を「話し方の技術」として学び、話す直前に適用しようとする。だがPREP法の本体は、話し方ではなく準備の順序にある。結論から話すためには、結論を先に持っていなければならない。持っていない結論は、先には話せない。

「結論から話せない」のは話し方の問題ではなく、結論を作らずに面接に来ているという準備の問題である。

この型が評価される理由

作る順番を抽象から始めると、なぜ評価が上がるのか。3つの経路がある。

経路1: 面接官が報告文に書ける言葉が、そのまま渡される

抽象的な結論は、報告文の言語と同じ抽象度にある。「複数人の意見を踏まえて合意形成ができる」は、そのまま報告に転記できる。一方、具体的なエピソードだけを話された面接官は、自分で抽象化する作業を負担することになる。その作業を面接官にさせないことが、そのまま加点になる。

経路2: 想定外の質問への耐性が上がる

抽象が先に固まっていると、質問が変わっても答えの方向が変わらない。「学生時代に力を入れたことは」「挫折経験は」「周囲からどう言われるか」——どの問いに対しても、同じ抽象に着地するように具体を選び直せばよい。

具体から作った人は、質問ごとに素材を探し直すことになるため、回答が一貫しない。一貫性の欠如は、面接官にとって「準備不足」あるいは「作り話」の信号として読まれる。

経路3: 話す量を減らせる

抽象が明確だと、必要な具体は一つで足りる。抽象が曖昧だと、伝わるまで具体を積み増すことになり、話が長くなる。話が長くなるほど、余計なことを言う事故の確率は上がる。発話量の最小化は、それ自体が勝率の技術である。

実行チェックリスト

  • [ ] 志望職種の業務を、動詞で3つ書き出した
  • [ ] その業務で活躍する人物像を、一文で定義した(ペルソナ)
  • [ ] ペルソナを、回答の冒頭に置ける抽象的な一文に翻訳した
  • [ ] その抽象を検索クエリにして、該当する経験を3つ以上拾った
  • [ ] 拾った経験に、行動だけでなく判断の理由を書き足した
  • [ ] 「自己PR」「ガクチカ」「挫折経験」「長所短所」の4問すべてが、同じ抽象に着地することを確認した

最後の一行が最も重要である。4問が別々の抽象に着地しているなら、それは具体から作っている証拠である。

この型が使いにくい場面

限界も書いておく。

第一に、志望職種が決まっていないと動かない。 ステップ1が空白のままでは、抽象を定義できない。就活の初期段階で「まず自己分析から」と言われて手が止まる人が多いのは、順序としてはこちらが先だからだと私は考えている。ただし、この点は自己分析を否定するものではない。自己分析は、複数の職種のうちどれに寄せるかを選ぶための材料として必要である。

第二に、抽象に寄せすぎると、具体の生々しさが失われる。 抽象から降りてきた具体は、どうしても「型に嵌めた話」に見えるリスクがある。これを避けるには、ステップ4で、判断に迷った場面や、うまくいかなかった部分を残すのが有効である。整いすぎた話は、それ自体が不自然の信号になる。

第三に、決めた抽象が誤っていると、全体が誤った方向に最適化される。 ステップ1で自分の想像に頼らず、現場社員の言葉を取りに行くべきなのは、このためである。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 記憶を探しても、語るべきエピソードが出てこなかった。思いついても、使えるかどうかを判定できなかった。

読んだあとのあなた 抽象を先に決めるので、探す範囲が絞られて出てくる。しかも「この経験は使えるか」をイエス・ノーで判定できる。

明日からやること

  • やめる: 「自分の一番すごい経験は何だろう」から考え始めること
  • 始める: 証明したい素養を一語で決めてから、その素養が最も濃く出ている場面だけを記憶から呼び出すこと
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