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面接解体新書第1弾|転機の解剖

企業研究は「方向の一致」を証明するために行う ― 調べたことを並べても志望動機にならない

企業研究はしている。それなのに、志望動機にどう使えばいいのか分からない。

事業内容も、理念も、最近のニュースも調べた。けれど、それを並べただけの志望動機は、自分で読み返しても薄い。調べる量を増やしても、この感覚は消えない。

原因は、調べ方ではなく使い道が定義されていないことにある。この記事では、企業研究の目的を一つに固定する。


きっかけ ― 最終面接のテーマが明示されていた

三つ目の気づきは、第一志望だった大手シンクタンク/ITコンサルティング企業の最終面接対策をしているときに訪れた。

その企業の最終面接は、テーマが明示されていた。「あなたにとって当社がファーストキャリアとしてふさわしいか否かを判断する場」というものである。

この一文は、よく読むと非常に多くのことを語っている。

まず、判断の対象が「あなたが優秀かどうか」ではない。「あなたにとって当社がふさわしいか」である。主語が逆になっている。能力の検査はすでに終わっていて、最終面接で見るのは適合である、と企業自身が宣言している。

そしてもう一つ。「ファーストキャリアとして」という限定がついている。これは、目先の数年ではなく、キャリアの起点としての妥当性を問うている。つまり、中長期の時間軸で考えられているかどうかが問われている。

この一文を読んだとき、私は業界研究・企業研究の目的を組み替えた。

構造 ― 「辞めない」をどう証明するか

採用は投資である。投資である以上、企業が求めるのは、入社後に活躍する可能性が高く、かつ簡単には辞めない人材である。第二の気づきでは前者を扱った。第三の気づきは、後者を扱う。

問題は、「辞めない」をどう証明するかである。

「頑張ります」「絶対に辞めません」「御社が好きです」といった意志表明は、証明として機能しない。検証もできなければ反証もできず、誰でも同じことを言えるからである。面接官は、これを報告書に書けない。「本人が辞めないと言っていました」は、判断理由にならない。

では、検証可能な形式は何か。私が到達した答えは、方向の一致である。

中長期的な時間軸において、自分が歩みたいキャリアの方向と、会社が向かおうとしている方向が一致している。 これが証明できれば、その人物が辞める合理的な理由は存在しないことになる。

なぜなら、人が会社を辞める最大の理由の一つは、自分が行きたい方向と会社が行く方向がずれることだからである。逆に言えば、両者が同じ方向を向いていれば、その人にとって、その会社に居続けることが自分の目的に対して合理的な選択であり続ける。

これは意志ではなく構造の話である。だから面接官が報告書に書ける。「この学生が目指す方向と当社の中期経営計画の方向は一致しており、定着の見込みが高いと判断した」と書ける。

したがって、「内定するための」業界研究・企業研究の目的は、この一致を証明するための材料を集めることである。

企業研究には他の目的もありうる。自分に合う会社を探す、業界の構造を理解する、といった目的である。それらを否定はしない。しかしここで述べているのは、あくまで内定を取ることを目的関数に置いた場合の企業研究の定義である。

具体的にどう証明するか

私が使っていた形は、次のようなものである。

中期経営計画を読んだところ、御社はITを通じて顧客のビジネスモデルそのものを変革することを目指している。

私は「ITの専門性をもって顧客のビジネス価値を最大化したい」と考えている。

私と御社の目指す方向は一致しているので、志望した。

三行しかない。しかし、この三行には検証可能な情報が含まれている。一行目は、企業が公開している文書に基づく事実である。二行目は、自分のキャリアの方向性である。三行目は、その二つの重ね合わせである。

面接官は一行目を検証できる(自社のことだから当然知っている)。二行目は本人の申告だが、これまでの経験や選択と整合していれば信頼できる。そして三行目は、一行目と二行目から論理的に導かれる。

これが「論理的に説明する」ということである。熱意を語っているのではなく、構造を提示している。

順番が決定的に重要 ― 自分の方向性を先に固定する

ここで、手順の順番について強調しておきたい。

先に決めるのは、自分のキャリアの方向性(就活の軸)である。会社ではない。

自分の軸を先に固定しておけば、あとはIR資料を見て、その会社がどんな方向に進もうとしているかを調べるだけになる。作業に落ちる。企業ごとに志望動機をゼロから発明する必要がなくなる。

逆に、会社を先に決めて、その会社に合うように自分の軸を作ると、何が起きるか。

第一に、企業ごとに軸が変わってしまう。A社を受けるときは「社会インフラを支えたい」と言い、B社を受けるときは「新しい価値を創造したい」と言うことになる。この状態では、「なぜ他社ではなく当社なのか」という質問に耐えられない。他社と比較するための固定された基準が、自分の中に存在しないからである。

第二に、深掘りに耐えられない。「なぜその軸なのですか」と聞かれたとき、会社から逆算して作った軸には、自分の経験という裏づけがない。

第三に、これは実務上大きいのだが、作業量が爆発する。志望企業の数だけ志望動機を発明することになる。軸が固定されていれば、各社のIR資料を読む時間だけで済む。

私がこの方法を転職活動でもそのまま流用できたのは、この構造のおかげである。軸は変わらない。差し替わるのは、調べる対象の企業だけである。

なぜIR資料・中期経営計画なのか

企業の方向性を知るための情報源として、私はIR資料と中期経営計画を中心に据えていた。理由を説明する。

第一に、採用向けの文書は、採用向けに整えられている。 採用サイトに書かれている「求める人物像」や「私たちのビジョン」は、学生に読ませるために書かれた文章である。抽象度が高く、どの会社もある程度似た表現になる。

第二に、IR資料は投資家向けであり、経営が実際に資源を投じる方向が書かれている。 投資家に対しては、どの事業に投資するのか、どの領域を成長させるのか、いつまでに何を達成するのかを、具体的に説明する必要がある。数字と期限がついている。方向性を特定するための材料として、精度が桁違いに高い。

第三に、IR資料を読んだこと自体が、熱量の証拠として報告可能になる。 学生向けに用意されていない資料を自分で探して読んだという行為は、志望度の高さを示す具体的な事実である。これは「御社が第一志望です」という申告と違い、面接官が報告書に書ける形の事実である。

この方法の限界

正直に書いておくと、この方法には効きにくい場合がある。

中期経営計画は、どの会社も似た表現になることがある。 デジタル化の推進、グローバル展開の加速、人的資本の強化。この水準の記述をそのまま引用しても、他社との差別化には使えない。「それは競合他社も同じことを言っていますよね」と返されて終わる。

この場合、私はより具体的な階層に降りることを勧める。全社の方針ではなく事業セグメント別の記述を読む、投資額の配分がどの領域に偏っているかを見る、経営陣が説明会でどの事業について時間を使って話しているかを見る。抽象的な標語ではなく、資源配分を見ると、会社ごとの違いが出る。ここは原典の記述を超えた私自身の考え方であり、必ずしも検証された方法ではないが、方向性としては有効だと考えている。


四つの気づきが収束する一点

四つの気づきは、別々のきっかけから、別々の場面で得られたものである。しかし、構造で整理すると、すべてが一つの命題に収束する。

面接とは、面接官が組織に提出する「合格を出した理由」の報告文を、こちらで書いて渡す作業である。

この一点から、四つを見直してみる。

第一の気づき(発言のコントロール)は、報告文に余計な減点材料を混ぜないための技術である。 面接官の判断材料はESと自分の発言だけであり、減点は事実として残る。だから、証明すべきことを証明し終えたら、それ以上は話さない。面接官の発言を肯定し、自分の話す時間を最小限にするのは、報告文をきれいなまま保つための作業である。

第二の気づき(優秀な人の定義を聞く)は、報告文の本体を手に入れる作業である。 「なぜこの学生は当社で活躍するのか」という部分の中身を、社員本人から調達する。①業務の性質から②活躍する素養を導く論理を、そのまま受け取って、自分の経験に接続する。

第三の気づき(IR資料との一致)は、報告文の「辞めない理由」の部分を作る作業である。 採用は投資であり、活躍することと定着することの両方が必要になる。中長期の方向の一致は、意志ではなく構造として説明できるので、報告文に書ける形式になる。

第四の気づき(GDの進行)は、報告文に書ける具体的な行動を残す作業である。 アイデアの質は解釈を経由しないと報告できないが、「議論の逸脱を検知して軌道を戻した」は事実として記述できる。しかも、その能力は入社後の業務に直結するので、活躍の予測につながる。

四つとも、主語は自分ではない。面接官である。

面接対策とは、自分を良く見せる訓練ではない。他人が自分について書く文章を、あらかじめ代筆しておく作業である。この視点の転換が、私にとって最大の「コツを掴んだ瞬間」だった。

その報告文には形式がある

そして、面接官に渡すべき報告文には、決まった形式がある。証明すべきものは、突き詰めると三点しかない。

  1. ①御社の業務 ― その会社・その職種で実際に何が行われているかの理解
  2. ②御社で活躍できる素養 ― ①を踏まえたとき、活躍する人が持っている資質を、自分が持っているという証明
  3. ③御社を辞めない理由 ― 中長期の自分の方向性と、会社の方向性が一致しているという証明

本ナレッジでは、これを3点セットと呼ぶ。

第二の気づきで手に入れた「優秀な人の定義」は、①と②を作る材料である。第三の気づきで扱った中期経営計画との一致は、③そのものである。第一の気づきの発言コントロールは、①②③を渡し終えた後に、それを壊さないための技術である。そして第四の気づきのGDは、②を行動として実演する場である。

ES、自己PR、ガクチカ、志望動機、逆質問、そしてケース面接に至るまで、選考のすべての要素は、この3点のいずれかを証明するための手段として位置づけられる。

四つの気づきは、この3点セットという一つの器に、すべて収まる。

そして最後に、この方法論の性質についてもう一度触れておきたい。ここまで述べてきたのは、内定を取ることを目的関数に置いた場合の最適化である。志望職種のペルソナに自分を寄せ、面接官が報告しやすい形に自分を整形する。この方法は、内定という一点については有効だと私は考えている。しかし、入社後にその職場で自分が幸福に働けるかという問いには、この方法論は答えていない。二つは別の問題である。その区別を持ったうえで、使ってほしい。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 調べたことを志望動機に並べていた。量を増やしても、薄さが消えなかった。

読んだあとのあなた 企業研究の目的が「方向の一致を証明すること」の一点だと分かっている。だから、調べる範囲も、書き方も自動的に決まる。

明日からやること

  • やめる: 企業情報を集めて、そこから志望動機を作ろうとすること
  • 始める: 先に自分のキャリアの方向性を一文で固定し、そのあとIR資料で会社の方向性を確認すること。順番を逆にすると、会社に合わせた嘘になる
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