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面接解体新書第1弾|転機の解剖

面接官が持っている情報は、2つしかない ― だから結果はコントロールできる

面接で余計なことを言って、あとで後悔する。

謙遜のつもりで否定してしまった。聞かれてもいないことを付け足してしまった。何を話すかの基準はあっても、「何を話さないか」の基準がない。

この記事では、その基準を渡す。基準は一つで、しかも面接の構造から機械的に導ける。 私はこれを、最終盤の一言で落ちた面接から学んだ。


きっかけ ― 最後の一言で落ちた面接

大手証券会社の面接に落ちたことが、最初のきっかけだった。

このとき私は、面接の途中までは悪くない手応えを持っていた。それでも落ちた。そして自分の面接を振り返ったとき、私は自分の印象が面接の終盤で下がったことに気づいた。それまで積み上げてきたものが、最後に自分が発した言葉によって帳消しになっていた。

何が起きたかは、はっきりしている。面接がほぼ終わりかけたところで、面接官がこう言った。

面接官: 「あなたは、メンタルが強そうですね」

私はこう答えた。

私: 「いえ、そんなことはないです。落ち込むこともあります」

結果は不合格だった。

このとき何が起きたのかを冷静に整理すると、こうなる。面接官は、それまでの受け答えを通じて「この学生はメンタルが強い」という印象を形成していた。営業職の適性として、これはプラスの評価である。面接官は、その印象を確認するために「メンタルが強そうですね」と口に出した。そして私は、自分からその印象を否定した

面接官が持っていたプラスの材料を、受験者本人が手を伸ばして壊したのである。誠実さのつもりだったが、結果として、性格的に営業職の適性がないと判断された。私が答えるべきだったのは、面接官が抱いているイメージを崩さない答え方だった。少なくとも、自分から下方修正する必要はまったくなかった。

構造 ― 変数は一つしかない

この失敗から、私は面接というものの構造を次のように理解するようになった。

まず、書類選考を通過している時点で、定量的な足切りはクリアしている。学歴もWebテストのスコアも、面接の場ではもう動かない。

そして、面接官が持っている判断材料は、①ESと②面接中に自分が発した言葉の二つしかない。これ以外に、面接官への入力は存在しない。面接官はあなたの人格を知らないし、あなたが本当はどれだけ優秀かも知らない。知りようがない。面接官が知っているのは、紙に書かれた情報と、その場で耳に入った言葉だけである。

このうち、ESはすでに提出済みで、面接の場では変更できない。

つまり、面接において自分が動かせる変数は、自分の発言ひとつだけである。

ここから、非常に重要な系が導かれる。自分の発言をコントロールできれば、結果をコントロールできる。 面接は運や相性で決まるものではなく、自分が発する言葉の総体で決まる。そう考えれば、面接は制御可能な対象になる。

だから私は、面接中の自分の発言について、一つ一つが相手にどんな印象を与えようとしているのかを意識するようになった。この発言はプラスに働くのか、マイナスに働くのか、それとも何も生まないのか。そして、面接が終わった時点で、面接官の中に残っている印象の総和がプラスになっていれば勝ちである。

加点と減点は対称ではない

ここでもう一段、構造を掘り下げておきたい。私は、面接における加点と減点は対称ではないと考えている。

加点は、面接官の解釈を経由する。「この学生は論理的だ」「主体性がありそうだ」といった評価は、いくつかの発言から面接官が組み立てた解釈である。解釈である以上、輪郭は曖昧で、他の材料によって上書きされうる。

一方、減点は事実として残る。「メンタルが弱いと本人が言った」「志望動機を聞かれて答えられなかった」「前の発言と矛盾したことを言った」。これらは解釈ではなく、その場で起きた出来事である。面接官が後で思い返すときも、報告書に書くときも、事実は曖昧化しない。

したがって、一度発生した減点は、後からの加点で相殺しにくい。これが、大手証券会社の面接で起きたことである。それまでの数十分で積み上げた解釈が、最後の十秒の事実に負けた。

この非対称性を理解すると、面接での振る舞い方が変わる。「もっと良いことを言おう」という発想から、「余計なことを言わない」という発想に重心が移る。そして、余計なことを言わない技術は、話し方の技術ではなく、勝率の技術である。

技術1 ― 基本的に面接官の発言を肯定する

具体的な技術として、私が徹底したことが二つある。一つ目は、自分にとってマイナスな内容でない限り、基本的に面接官の発言を肯定することである。

面接官が「つまり、こういうことですか」「あなたはこういうタイプですね」と言ってきたとき、多少ニュアンスが違っても、「はい、その認識で合っています」と受ける。

なぜこれが効くのか。三段階で説明する。

第一に、面接官がそう言っているということは、面接官の中ではすでにその解釈が成立しているということである。面接官は自分の理解を確認しにきている。ここで「いえ、少し違って」と訂正すると、面接官の中に「認識のズレ」という新しい問題が発生する。

第二に、ズレを埋めるためには追加の説明が必要になる。説明が必要になれば、こちらの発言量が増える。発言量が増えれば、減点の機会も増える。訂正のための説明の途中で、余計なことを口走るリスクが立ち上がる。

第三に、訂正によって得られる利益がほとんどない。面接官の解釈が多少ずれていても、それがマイナス方向でないなら、放置して何も失わない。むしろ、面接官が自分で組み立てた好意的な解釈は、こちらから提示した主張よりも強く働く。人は、自分で思いついた結論を疑いにくいからである。

ただし、例外がある。その解釈が自分にとってマイナスである場合は、肯定してはいけない。 「君は少し慎重すぎるところがあるね」と言われて「はい、その通りです」と答えれば、「慎重すぎる学生」というラベルが、面接官の中で確定してしまう。

この場合の対処は、全否定ではなく、部分肯定と再定義である。「たしかに、事前に確認を重ねる傾向はあります。それは、サークルで◯◯という経験をしてから、意識的にそうするようになったものです」というように、事実の部分は認めたうえで、その性質が生まれた文脈を与える。全否定すると面接官の観察力を否定することになり、それ自体が摩擦を生む。事実は認め、意味づけだけを差し替えるのが安全である。

技術2 ― 自分が話す時間を最小限にする

二つ目の技術は、自分が話す時間を最小限にすることである。

具体的には二つのやり方をとった。一つは、ゆっくり話すこと。もう一つは、逆質問の際に、面接官の回答に対してさらに追加の質問をすることである。

これも、なぜ効くのかを説明する。

前述の通り、面接では発言が唯一の変数であり、減点は事実として残る。ということは、発言量はそのままリスク量である。証明すべきことを証明し終えたら、それ以上話す理由はない。追加で話せば話すほど、矛盾を生むリスク、失言のリスク、準備していない領域に踏み込むリスクが増える。

ゆっくり話すことには、二つの効果がある。単位時間あたりの発言量が減るという直接的な効果と、考えながら話す余裕が生まれるという効果である。早口で話すと、口が思考を追い越して、準備していなかったことまで喋ってしまう。

逆質問で追加質問を重ねることの効果は、より大きい。面接の残り時間を、面接官に話させる時間に転換できる。 面接官が話している時間、こちらは減点されない。しかも、面接官が話した内容は、次の面接で使える情報になる。さらに私の推測だが、面接官の側から見ると、自分がよく話した面接は「話が弾んだ面接」として記憶されやすいのではないかと考えている。

ただし、この技術には明確な限界がある。話さなさすぎると、渡すべき材料を渡せない。 実際、私は後述するGDで「自分の発言が本当に必要なのか確信が持てず、ほとんど発言できない」という失敗をしている。沈黙は減点を防ぐが、加点も生まない。

正しい運用は、「話す量を減らす」ではなく、「証明すべきことは全部話し、それ以外を削る」である。何を証明すべきかが決まっていなければ、この判断はできない。だからこの技術は、次に述べる第二の気づきとセットでなければ機能しない。

一言でいうと

第一の気づきを一言でまとめる。

面接は、面接終了の時点で面接官に対してプラスの印象を抱かせていれば勝ちである。面接官の判断材料はESと面接中の自分の発言だけなので、自分の発言をコントロールできれば受かる。


四つの気づきが収束する一点

四つの気づきは、別々のきっかけから、別々の場面で得られたものである。しかし、構造で整理すると、すべてが一つの命題に収束する。

面接とは、面接官が組織に提出する「合格を出した理由」の報告文を、こちらで書いて渡す作業である。

この一点から、四つを見直してみる。

第一の気づき(発言のコントロール)は、報告文に余計な減点材料を混ぜないための技術である。 面接官の判断材料はESと自分の発言だけであり、減点は事実として残る。だから、証明すべきことを証明し終えたら、それ以上は話さない。面接官の発言を肯定し、自分の話す時間を最小限にするのは、報告文をきれいなまま保つための作業である。

第二の気づき(優秀な人の定義を聞く)は、報告文の本体を手に入れる作業である。 「なぜこの学生は当社で活躍するのか」という部分の中身を、社員本人から調達する。①業務の性質から②活躍する素養を導く論理を、そのまま受け取って、自分の経験に接続する。

第三の気づき(IR資料との一致)は、報告文の「辞めない理由」の部分を作る作業である。 採用は投資であり、活躍することと定着することの両方が必要になる。中長期の方向の一致は、意志ではなく構造として説明できるので、報告文に書ける形式になる。

第四の気づき(GDの進行)は、報告文に書ける具体的な行動を残す作業である。 アイデアの質は解釈を経由しないと報告できないが、「議論の逸脱を検知して軌道を戻した」は事実として記述できる。しかも、その能力は入社後の業務に直結するので、活躍の予測につながる。

四つとも、主語は自分ではない。面接官である。

面接対策とは、自分を良く見せる訓練ではない。他人が自分について書く文章を、あらかじめ代筆しておく作業である。この視点の転換が、私にとって最大の「コツを掴んだ瞬間」だった。

その報告文には形式がある

そして、面接官に渡すべき報告文には、決まった形式がある。証明すべきものは、突き詰めると三点しかない。

  1. ①御社の業務 ― その会社・その職種で実際に何が行われているかの理解
  2. ②御社で活躍できる素養 ― ①を踏まえたとき、活躍する人が持っている資質を、自分が持っているという証明
  3. ③御社を辞めない理由 ― 中長期の自分の方向性と、会社の方向性が一致しているという証明

本ナレッジでは、これを3点セットと呼ぶ。

第二の気づきで手に入れた「優秀な人の定義」は、①と②を作る材料である。第三の気づきで扱った中期経営計画との一致は、③そのものである。第一の気づきの発言コントロールは、①②③を渡し終えた後に、それを壊さないための技術である。そして第四の気づきのGDは、②を行動として実演する場である。

ES、自己PR、ガクチカ、志望動機、逆質問、そしてケース面接に至るまで、選考のすべての要素は、この3点のいずれかを証明するための手段として位置づけられる。

四つの気づきは、この3点セットという一つの器に、すべて収まる。

そして最後に、この方法論の性質についてもう一度触れておきたい。ここまで述べてきたのは、内定を取ることを目的関数に置いた場合の最適化である。志望職種のペルソナに自分を寄せ、面接官が報告しやすい形に自分を整形する。この方法は、内定という一点については有効だと私は考えている。しかし、入社後にその職場で自分が幸福に働けるかという問いには、この方法論は答えていない。二つは別の問題である。その区別を持ったうえで、使ってほしい。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 「もっと良いことを言おう」と考えていた。だから、言わなくていいことまで言っていた。

読んだあとのあなた 面接官への入力がESと自分の発言の2つだけだと分かっている。動かせる変数が発言だけなら、発言を制御すれば結果は制御できる。

明日からやること

  • やめる: 面接中に、加点を取りにいこうとして話を足すこと
  • 始める: 面接官が肯定的な解釈を述べたら、否定せずに根拠を1つ足して受け取ること。加点は解釈だが、減点は事実として残る
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