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面接解体新書第1弾|転機の解剖

30社落ちた原因はESではなかった ― 書類選考を決めているのは定量指標である

ESを何度書き直しても、書類が通らない。

書き方の本は読んだ。構成も直した。添削も受けた。それでも結果が変わらない。だから「まだ書き方が足りないのだろう」と思って、また書き直す。

その作業を、今日でやめてほしい。 私も同じことを、30社ぶん繰り返した。そして最後に分かったのは、触っていた変数が、そもそも合否を決めている変数ではなかったということだった。


当時の私が信じていた原因

三十社に落ちていた時期、私は原因が完全に分かっているつもりでいた。ESである。ESの書き方が悪いから通らないのだ、と信じていた。

だから私がやったことは、すべてESの改善に向かった。書き方の本を読み、構成を整え、表現を練り、添削を受けた。冒頭の一文をどう始めるか、結論を先に置くか、数字をどこに入れるか。文章の質を上げれば通過率が上がるはずだと考えていたし、周囲の学生も、大学のキャリアセンターも、就職活動の情報サイトも、みなその前提で話をしていた。「落ちたのはESが弱いから」という説明は、あまりにも自然に見えた。

しかし、いくら書き直しても結果は変わらなかった。ここで普通は「まだ書き方が足りない」と考える。私もしばらくそう考えた。だがある時点で、別の可能性に気づいた。ESの質が原因であるなら、質を上げれば結果が動くはずである。動かないということは、そもそも私が触っている変数が、合否を決めている変数ではないのではないか。

結論 ― 落ちていた原因はWebテストだった

今振り返ると、本当の原因はWebテストの結果が悪かったことである。

そして、そこから導かれるより一般的な結論はこうなる。書類選考の段階では、ESの本文はほとんど読まれていない。合否を分けているのは、学歴(最低限のライン)とWebテストのスコアという、定量的な指標である。

これは本ナレッジ全体の出発点になる主張なので、なぜそう言えるのかを順を追って説明する。根拠は三つある。採用側の処理量の物理的な制約、私自身に起きた通過パターンの偏り、そして秋以降に実際に起きた変化である。

根拠1 ― 全員のESを読むことは物理的に不可能である

まず、採用側の物理的な制約から考える。

人気企業には、一つの募集に対して数千通のESが届く。一方で、それを処理する採用担当は限られた人数しかいない。ここで単純な思考実験をしてみたい。仮に一通あたり三分で読み、内容を評価し、合否を記録できたとしよう。これはかなり速い部類の仮定である。ESには複数の設問があり、それぞれ数百字ある。三分で読み切って評価まで下すのは、実際には相当に厳しい。

それでも三分と仮定して、数千通を処理するとどうなるか。仮に三千通なら九千分、つまり百五十時間である。これを数人で分担しても、一人あたり数十時間。しかも採用担当は書類選考だけをやっているわけではない。同じ時期に説明会を回し、面接の日程を組み、面接官を務める社員の予定を押さえ、内定者のフォローもしている。書類選考の締切から一次面接の案内までに与えられている時間は、多くの場合、数週間しかない。

つまり、全員のESを同じ密度で精読するという運用は、そもそも成立しない。何らかの機械的な絞り込みが先行していなければ、スケジュールが破綻する。

では、機械的に絞り込める情報とは何か。機械的に処理できるのは、あらかじめ数値化されている情報だけである。ESの本文は数値化されていない。文章を評価するには、必ず人間が読むという工程が要る。読む工程を省略できないものを、絞り込みの一段目に置くことはできない。

一方で、学歴とWebテストのスコアは、最初から数値または順序のついたデータとして手元にある。閾値を設定すれば、人間が一切読まずに母集団を数分の一に落とせる。合理的な設計者であれば、まずここで絞る。

したがって私は、書類選考は「定量指標で足切りし、残った母集団のESが、面接の場で初めて読まれる」という順序で運用されていると考えている。ESの本文が精読されるのは、書類選考の段階ではなく、面接段階に入ってからである。

なお、ここは私が採用側の運用をすべて直接見て確認したわけではない。制約条件から逆算した推論である。ただしこの推論は、次に述べる二つの事実と整合する。

根拠2 ― SPIだけ全部通り、それ以外は全部落ちた

私の身には、非常に分かりやすい形で結果の偏りが現れていた。

私は特定のWebテスト形式、具体的にはSPIだけが得意だった。そして、SPIを採用している企業は全部通過していた。それ以外の形式を採用している企業は、全部落ちていた。

「ほぼ全部」ではない。文字通り、全部である。 SPIを使う企業には一社も落ちず、それ以外の形式を使う企業には一社も通らなかった。ここまできれいに分かれると、偶然という説明のほうが苦しくなる。

SPIというのは、就職活動で使われる適性検査の一形式の名称である。適性検査には複数の種類があり、出題形式も、時間配分も、必要な解き方もそれぞれ違う。私はたまたまSPIの形式に適応できていて、他の形式には適応できていなかった。

ここで重要なのは、この結果の偏りが「Webテストの形式」という軸に沿って、きれいに分かれていたということである。

もし書類選考がESの内容で決まっているのなら、この分かれ方は説明できない。私が提出していたESは、Webテストの形式によって書き分けられていたわけではない。SPIを使う企業向けには良いESを書き、他の形式を使う企業向けには手を抜く、というような運用を私はしていない。企業ごとに志望度の差はあっても、「Webテストの形式」という切り口でESの質が系統的に変わる理由は、どこにもない。

にもかかわらず、結果はWebテストの形式で完全に分かれた。だとすれば、説明変数として機能しているのはESではなくWebテストである、と考えるのが自然である。

この論証には一つ穴がありうる。「SPIを使う企業と、それ以外の形式を使う企業とで、業界や企業規模が偏っていて、そちらが本当の原因ではないか」という反論である。この可能性は、この根拠だけでは完全には潰せない。潰すのが、次の三つ目である。

根拠3 ― Webテストの対策だけを変えたら、通過率が変わった

秋にかけて、私はWebテストの勉強をした。SPI以外の形式についても、出題パターンを覚え、時間内に処理する訓練をした。

その結果、書類選考の通過率は8割程度まで上がった。

そして、ここが最も重要な点である。私は、ESの中身を変えていない。

三十社落ちていた時期に使っていたESと、通るようになってから使っていたESは、同じ内容である。書き直していない。変えたのはWebテストの対策だけであり、それだけで通過率が8割になった。

これは、条件を揃えた比較としてかなり強い。原因を特定するときの基本的な作法として、ある変数を操作して結果が変わったなら、その変数は原因の候補である。逆に、ある変数を繰り返し操作しても結果が変わらないなら、その変数は原因ではない可能性が高い。

三十社落ちていた時期、私はすでにESの改善に膨大な時間を投じていた。手を尽くしても動かなかった。 その同じESのまま、Webテストの対策だけを入れた途端に、結果が動いた。

ESについては「操作しても変わらない」が起き、Webテストについては「操作したら変わった」が起きた。 結論は一つしかない。

(なお、ESについては本選考の前に改善している。ただしそれは書類を通すためではなく、面接で話す内容を組み立てるためである。この点は、ESの役割の話として後述する。)

これは、原因を特定するときの基本的な作法にかなっている。ある変数を操作して結果が変わったなら、その変数は原因の候補である。逆に、ある変数を繰り返し操作しても結果が変わらないなら、その変数は原因ではない可能性が高い。ESについては後者が起き、Webテストについては前者が起きた。

以上の三つ、すなわち①採用側の処理量から導かれる構造的な制約、②Webテストの形式に沿って文字通り完全に分かれた通過パターン、③ESを固定したままWebテスト対策という単一の介入で起きた通過率8割への改善が揃ったことで、私は「書類選考を決めているのは定量指標である」という結論に至った。

学歴とWebテスト、どちらが重いのか

ここで、多くの人が気にする点にも触れておく。学歴である。

私の理解では、学歴とWebテストのスコアは、同じ重みで並んでいるのではない。

  • 学歴は、閾値である。 ある水準を満たしていれば、それ以上は差がつかない。上から順に点数化されているわけではない
  • Webテストは、変数である。 ここで差がつく

そして、両者の関係は次のようになっていると私は考えている。

Webテストの点数 >> 学歴

つまり、Webテストを頑張れば、学歴は逆転できる。

これは、学歴で不利を感じている人にとって、最も重要な情報だと思う。学歴は変えられない。だが、Webテストのスコアは変えられる。変えられない変数に悩む時間を、変えられる変数に投じたほうがいい。

もちろん、閾値そのものを下回っている場合は、そこで止まる。だがその閾値は、多くの人が恐れているほど高くはない、というのが私の実感である。学歴を理由に諦めるより先に、Webテストの対策をやり切ったかどうかを確認したほうがいい。

この主張の限界 ― これは私一人の観測に基づく推論である

ただし、ここは正直に書いておかなければならない。

上記はすべて、私一人の就職活動という一件の観測から導かれた推論である。 統計的に検証されたものではないし、私が企業の書類選考の運用を、複数社の内側から確認したわけでもない。「数千通のESを限られた人数では読めない」という制約自体は誰にでも検証できる形の理屈だが、そこから「だから読んでいない」を導く部分は、あくまで推論である。企業によっては、限られた人数でも総力を挙げて全部読んでいるかもしれない。

この主張が効く範囲についても、条件を明示しておきたい。

この構造が最も強く効くのは、応募者数が多い企業である。 数千通が届く大手企業では、物理的制約が決定的に効く。逆に、応募者が数十人しか来ない企業、採用人数が一桁のベンチャー、あるいは特定のスキルを持った学生を狙って採る職種別採用などでは、母数が小さいために制約が効かない。この場合、ESは最初から精読されている可能性が高い。志望先がどちらのタイプかによって、力の入れどころは変わる。

また、前節で述べた「学歴は閾値であり、Webテストのほうが重い」という理解も、私の観測に基づくものである。企業ごとに閾値の有無も高さも違うはずであり、ここを数値で示すことは私にはできない。

そして最後に、これは「ESなどどうでもいい」という主張では断じてない。ESの役割は、まったく別のところにある。

ESの役割は「合否を決める文書」ではない

書類選考が定量指標で決まっているとすると、ESの位置づけを組み替える必要が出てくる。

私は、ESを「面接で自分が話すテーマを、自分で設計するための事前提出資料」と定義し直した。

理由はこうである。面接官が持っている判断材料は、①ESと②面接中に受験者が発した言葉の二つしかない。このうちESは、面接が始まる前に提出済みであり、その場で変更することはできない。逆に言えば、ESは「面接官が何を質問してくるか」をこちらから先に決められる、唯一の手段である。

面接官は、目の前の学生について何も知らない状態で面接に入る。手元にあるのはESだけである。だから質問は、ESに書かれていることを起点に組み立てられる。ESに書いていないことは、原則として聞かれない。

つまりESとは、自分が話したいテーマに面接官を誘導するための仕掛けである。合否を決める文書ではなく、面接という本番の議題を設定する文書である。

この理解に立つと、ESの書き方に対する要求がまったく変わる。「上手い文章を書く」ことは目的ではない。「面接でこの話に持ち込みたい」という設計が先にあって、その入口をESに置いておく、という作業になる。何を証明したいのか、そのために何を聞かれたいのか。そこから逆算してESの記載事項を決める。

書類は定量、面接は論理。就職活動には性質のまったく異なる二つのゲームが接続されていて、それぞれ勝ち方が違う。この分離に気づいていなかったことが、三十社落ちていた時期の私の本当の問題だった。私はずっと、面接のゲームの道具(ES)を磨くことで、書類のゲーム(定量指標)に勝とうとしていたのである。

再現手順 ― 誰でも実行できる形にする

以上を踏まえた具体的な行動指針は、次の通りである。

1. 夏インターンシップの募集が始まる前に、Webテストの対策を終える

これが最優先である。理由は二つある。

第一に、Webテスト対策は投下時間あたりの効果が、就職活動の中で最も高い。出題形式は決まっており、練習すればスコアは上がる。これは自己分析や業界研究のように、どこまでやれば終わりなのか分からない性質の作業ではない。有限の作業量で、有限の期間に、確実に片がつく。

第二に、後述する通り、対策前に受検してしまうこと自体が、取り返しのつかない損失を生む場合があるからである。

2. 時間がないなら、形式を絞る

すべての形式を仕上げる時間がない場合は、一つの形式だけを完成させ、その形式を採用している企業だけに応募するという戦い方をとる。

これは妥協策ではなく、合理的な選択である。書類選考が定量指標で決まっているのなら、対策が終わっていない形式の企業に応募することの期待値は、限りなく低い。低い期待値の応募を数十社積み上げるより、期待値の高い応募を数社に絞る方がよい。

各社がどの形式を採用しているかは、多くの場合、受検した学生の情報が出回っているし、選考案内のメールやマイページの記載から判別できることもある。ここは事前に調べる価値がある。

3. 対策が終わっていない企業は、秋以降に回す

「夏のインターンシップに出られないと不利になるのではないか」という不安があると思う。私の観測では、その不安は過大である。

インターンシップの内容も、参加によって本選考が有利に進む度合いも、夏・秋・冬でほとんど変わらない。夏の枠に無理やり滑り込むために、対策が終わっていない状態でWebテストを受検するのは、次に述べるリスクを考えると割に合わない。

対策を終えてから、秋以降に応募し直す。この順序の方が、通年で見た通過数は多くなる。

Webテスト結果の使い回しという、最大の落とし穴

ここが、この記事で最も実利の大きい部分である。

企業によっては、夏のインターンシップ選考で受検したWebテストの結果を、その後の本選考でもそのまま使い回す。

これが何を意味するか、順を追って考えてほしい。

対策が終わっていない六月の時点で、あなたが志望度の高い企業のインターンシップに応募し、Webテストを受検したとする。当然、スコアは低い。インターンシップの選考には落ちる。ここまでは、痛いが取り返しがつく。

問題はその先である。その企業が結果を使い回す運用をしていた場合、低いスコアがあなたに紐づいたまま、翌年の本選考まで持ち越される。 つまりあなたは、秋にどれだけWebテストを勉強しても、冬にどれだけESを書き直しても、志望動機をどれだけ磨いても、その企業の書類選考には一年間、二度と通らない。

これは想像上のリスクではない

念のため書いておくが、これは「理論上ありうる」という話ではない。私は、実際にこれが起きた例を身近で見ている。

私の友人は、夏のインターンシップ選考で受検したWebテストの結果を、その企業に秋以降も使い回された。結果として、その企業の選考をそもそも受けることができなかった。 本選考の時期には対策も終わっており、志望動機も固まっていた。それでも、夏の一回の受検が理由で、土俵に上がる機会そのものが失われていた。

やり直しは効かない。Webテストは、受け直せば上書きされるものではなく、一度紐づいたら動かせない記録として扱われる場合がある。

しかもこの事実は、多くの場合、事前にはっきりと告知されない。少なくとも私の知る限り、受検の直前に「この結果は本選考でも使用します」と大きく注意喚起される運用が一般的だとは言えない。学生は自分が何を失ったかを知らないまま、翌年の書類選考で落ち続けることになる。

三十社落ちていた時期の私が本当に恐れるべきだったのは、一社ごとの不合格ではない。気づかないうちに、一年分の応募機会を自分で潰しているという状態である。ESを書き直しても結果が動かない企業の中には、そもそも土俵に上がる権利を自分で捨ててしまっていた企業が混じっていた可能性が高い。

具体的な対処

以上を踏まえると、行動規範は明確である。

第一に、対策が終わるまで、志望度の高い企業のWebテストは絶対に受検しない。 これが最重要である。「とりあえず受けてみる」は、志望度の高い企業に対しては最悪の手である。受検は、その企業に対して一回きりのカードを切る行為かもしれない、と考えた方がよい。

第二に、「練習のために受ける」なら、志望度がゼロの企業で受ける。 形式に慣れるための受検自体は有効である。しかしその代償を、志望企業で払ってはいけない。練習台は、落ちても構わない企業に限る。

第三に、受検する前に、募集要項と選考案内を読む。 本選考でも同じ結果を利用する旨が書かれていることがある。書かれていなければ安全とは限らないが、書かれていれば確実に危険である。読むコストはほぼゼロである。

第四に、受検方式の違いを理解しておく。 自宅などで受けるWeb受検の方式と、会場に行って受けるテストセンター方式がある。私の理解では、テストセンター方式には、一度受けた結果を受験者自身の選択によって複数の企業に送信できる仕組みがあり、これは裏を返せば「良い結果が出た回を選んで使い回せる」ということでもある。この仕組みの有無や条件は形式や年度によって変わりうるので、必ず自分が受ける年の公式の案内で確認してほしい。ただ少なくとも、「受検は一回ごとに独立して評価される」という素朴な前提は事実と異なる場合がある、ということは知っておく必要がある。

第五に、受検の順序を設計する。 対策を終える、志望度の低い企業で一、二社受けて本番の形式と時間感覚に慣れる、そのうえで志望度の高い企業を受ける。この順序を守るだけで防げる事故が、相当ある。

まとめ

三十社落ちていた当時の私は、原因をESだと考えていた。だからESを直し続けた。しかし本当の原因はWebテストの結果であり、私は合否を決めていない変数を何ヶ月も磨いていたことになる。

書類選考と面接は、評価の性質がまったく違う。書類は処理量の制約から定量指標で機械的に絞られ、ESの本文が精読されるのは面接段階に入ってからである。したがって、書類で戦うための武器はWebテストのスコアであり、ESは面接という次のゲームのための議題設定書である。

繰り返しになるが、これは私一人の観測から導いた推論であり、企業規模や採用形態によって当てはまり方は変わる。それでも、「Webテスト対策を夏の募集前に終える」「対策前に志望企業のテストを受けない」という二点は、仮にこの推論が部分的にしか正しくなかったとしても、実行して損をすることのない行動である。就職活動で最初に手をつけるべきは、ここだと私は考えている。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 書類が通らない原因はESだと思い、文章を直し続けていた。直しても結果が動かないので、さらに直していた。

読んだあとのあなた 書類選考を決めているのが学歴とWebテストという定量指標だと分かっている。だから、効かない作業をやめて、効く場所に時間を移せる。

明日からやること

  • やめる: 書類段階で落ちているのに、ESの文章を磨くこと
  • 始める: 志望企業が使っているWebテストの形式を調べ、対策に時間を全部移すこと。ESを直すのは、書類が通るようになってからでいい
前の記事すべての記事は、たった3つの事実から導かれている