面接解体新書就活・転職の面接・選考攻略メディア
面接解体新書第4弾|ESと書類選考

ESは、面接の事前打ち合わせ資料である

面接で何を聞かれるか、予測できない。

だから準備が終わらない。想定問答を作っても作っても、想定外が来る気がして不安が消えない。「聞かれることに備える」というやり方には、終わりがない。

この記事では、その前提をひっくり返す。面接の議題は、あなたが自分で設定できる。 その装置がESである。


ESの目的を取り違えると、面接の設計ができない

ESについて最も多い誤解は、「ESは書類選考を通過するための文書である」というものだと私は考えている。

この理解には、2つの問題がある。

第一に、事実として正確ではない。数千通のESを限られた採用メンバーが精読することは物理的に不可能であり、書類選考の実質は学歴とWebテストという定量指標による足切りである。ESの本文が丁寧に読まれるのは、面接の段階に入ってからである。

第二に、そしてこちらのほうが重要だが、この理解のままだと面接の設計ができない。 ESを「通過するための文書」と捉えると、通過した時点でESの役目は終わったことになる。すると、面接は面接で改めて準備することになり、ESと面接が切り離される。

私の理解は違う。

ESは、面接で何を話すかを自分で決めるための、事前打ち合わせ資料である。

面接官は、手元にあるESを見ながら質問を組み立てる。つまり、ESに書いた内容が、面接の議題を規定している。 これは受験者にとって、極めて有利な構造である。自分が話したいテーマを、自分で設定して提出できるということだからだ。

この構造を活かすなら、順序はこうなる。

面接で話したいことを決める → それに誘導するためのESを書く

逆ではない。ESを書いてから面接で話すことを考えるのでは、せっかくの議題設定権を放棄していることになる。

設計の起点は、ES提出前に固める3点セット

では、面接で話したいことをどう決めるのか。私はES提出前に、志望企業・志望職種について必ず次の3点を書き出していた。

  1. ①御社の業務 — その職種の人は、日々何をしているのか
  2. ②御社で活躍できる素養 — ①を踏まえたとき、成果を出す人は何を持っているのか
  3. ③御社を辞めない理由 — 自分の中長期の方向性と、会社の方向性がどう一致しているのか

この3点が、その企業に対する自分のアピールポイントのすべてである。 面接で話すべきことは、この3点の証明に尽きる。

そして、この3点を細かく用意できていれば、面接で何を聞かれてもブレない。なぜなら、どの質問も結局この3点のどれかを検査しているからである。 質問の形式が変わっても、答えるべき内容は変わらない。

3点をES上のどこに配置するか

3点セットが決まったら、ESの各設問への割り当ては自動的に決まる。

ESの設問 → 主に担う証明

  • ガクチカ … ②御社で活躍できる素養
  • 自己PR … ②御社で活躍できる素養
  • 志望動機 … ③御社を辞めない理由(+①御社の業務)
  • 入社後にやりたいこと … ①御社の業務 + ③御社を辞めない理由
  • 自己分析系の設問 … ③御社を辞めない理由

この配置に従って書けば、ES全体が3点セットの証明として一本にまとまる。そしてこのESを持って面接に臨めば、面接官が何を質問しても、答えは3点セットのどこかに着地する。

一貫性は「努力して保つもの」ではなく「構造的に保たれるもの」

ESと面接の一貫性について、「同じことを言うように暗記しておく」というアプローチをとる人がいる。私はこれを勧めない。

暗記でつくった一貫性は、想定外の質問に弱い。暗記した文の外側を聞かれた瞬間に、参照先がなくなるからである。そこで即興で答えると、暗記した内容と食い違いが生じる。暗記は一貫性を保証しない。むしろ、暗記した範囲と即興の範囲の境界で矛盾を生む。

構造でつくる一貫性は、これと違う。3点セットという上位の設計があり、ESの各設問も面接の各回答も、そこから導出されている。導出元が同じなので、結果が食い違いようがない。

図式にすると、こうなる。

入力は3つだけ

  • ①御社の業務
  • ②御社で活躍できる素養
  • ③御社を辞めない理由

出力は、ESの各設問と、面接での回答

  • 志望動機(ES)
  • ガクチカ(ES)
  • 自己PR(ES)
  • 入社後の展望(ES)
  • 逆質問(面接)
  • そして、面接でのすべての回答

すべての出力が、同じ3つの入力から導かれている。

すべての出力が、同じ3つの入力から導かれている。この構造を先に作れば、一貫性は努力の対象ではなくなる。

突飛な質問への対処 — 「決めた方向性に寄せる」

とはいえ、面接では時折、3点セットのどれに該当するのか判然としない質問が来る。

私が実際に受けた例で言えば、あるコンサルティングファームの面接で、こう聞かれたことがある。

「第一志望の企業を3社挙げてください。そして、その3社すべてから内定が出たら、どこに行きますか」

この質問の意図は、正直に言っていまだに分からない。志望度を測っているのか、価値観の優先順位を見ているのか、単に反応を見ているだけなのか。

こうした質問への対処の原則は、一つである。

決めた方向性に寄せて答える。

意図が読めない質問に対して、その場で新しい論理を組み立てようとしてはいけない。新しい論理は、既存の3点セットと整合する保証がないからである。 整合しない答えを出すと、そこから深掘りが入り、矛盾が露呈する。

代わりに、既に固めてある3点セットの言葉を使って答える。上の質問であれば、「御社に行きます。理由は、私が身につけたい◯◯という能力を、最も速く獲得できる環境だと考えているからです」といった形になる。この回答は、③御社を辞めない理由の論理をそのまま流用している。

新しい論理を作るのではなく、既にある論理を当てはめる。 これが、突飛な質問に対する最も安全な処理である。

なお、この種の質問には、もう一つ原則がある。すべての質問でインパクトを残す必要はない。 明らかに配点の高い質問(ガクチカ、志望動機、深掘り)と、配点の読めないトリッキーな質問がある。後者に全力を投じるのは資源配分として誤りであり、当たり障りのない結論に、当たり障りのない理由を一つ添えれば十分である。減点されないことが目的であって、加点を狙う場面ではない。

この設計がもたらす3つの効果

3点セットを起点にESと面接を連動させると、次の効果が得られる。

効果1: 面接官の質問が予測可能になる

ESに書いた内容が面接の議題になるということは、質問を自分で誘導できるということである。

たとえばガクチカに「部署間の方針対立を調整した」と書けば、面接官は高い確率で「そのとき具体的にどう調整したのか」「なぜその方法を選んだのか」と聞いてくる。これは、こちらが最も準備してある領域である。

逆に、ESに準備の薄いテーマを書くと、そこを掘られる。ESに書く内容は、深掘りされて困らないものだけにする。 書いた瞬間、それは議題になる。

効果2: 面接の準備量が激減する

3点セットが固まっていれば、面接ごとに新しく準備することはほとんどない。企業が変われば③(と①)を作り直す必要があるが、②は職種が同じなら使い回せる。

準備すべきなのは「回答」ではなく「3点セット」である。 回答は、3点セットから毎回導出すればよい。想定問答集を作る必要はない。

効果3: 深掘りへの耐性が上がる

深掘りは、主張を階層的に降ろしていく作業である。3点セットが細かく作り込まれていれば、降りられる階層が深い。逆に、表面的な回答だけ用意していると、2階層目で言葉が尽きる。

3点セットを「細かく」用意する、という点が重要である。 ①御社の業務を、パンフレットの一文ではなく、日々の動詞のレベルまで分解しておく。②を、一語の抽象名詞ではなく、なぜその素養が必要になるのかという理由まで含めて用意しておく。この細かさが、深掘りに対する階層の深さになる。

実行手順

手順1: 志望企業ごとに、3点セットを書き出す 一社につきA4一枚程度。①は動詞で、②は理由込みで、③は自分の軸と企業の中期経営計画の接点として書く。

手順2: 各設問に、3点セットのどれを担わせるかを割り当てる 上の対応に従う。設問数が多い企業では、同じ項目を複数の設問で補強する形になる。

手順3: 割り当てに従ってESを書く このとき、深掘りされて困る記述を入れない。 書けることではなく、語れることを書く。

手順4: 提出したESを印刷し、自分で深掘りしてみる 面接官になったつもりで、各記述に「なぜ?」を3回ぶつける。答えられない箇所が、面接での事故ポイントである。

手順5: 面接直前に、ESと3点セットを読み返す 暗記するのではなく、導出元を再確認する。面接中に想定外の質問が来たとき、戻る場所を明確にしておく。

注意点

第一に、ES提出後に方針を変えないこと。 ESは提出した時点で議題が確定する。後から「やはり別の素養を推そう」と変更すると、ESの記述と面接の発言が食い違い、一貫性の欠如として読まれる。方針変更は、次の企業から適用する。

第二に、この設計は「ESの本文は書類選考でほぼ読まれていない」という私の理解を前提にしている。 ただし、応募者数が少ない企業や、ES提出がWebテストより後ろの工程にある企業では、事情が異なる可能性がある。「ESの中身は書類通過に効かない」を過度に一般化すべきではない、というのは正直に書いておく。いずれにせよ、ESを面接の設計図として書くという方針は、どちらの前提でも損をしない。

第三に、面接官がESを深く読み込んでいるとは限らない。 特に選考の終盤ほど、面接官は忙しい社員である。ESの内容を面接官が完全に把握している前提で話すと、伝わらない。ESに書いたことでも、面接では改めて要点を口頭で提示する必要がある。ESは議題を設定する装置であって、説明を省略する装置ではない。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 聞かれることに備えようとして、想定問答を作り続けていた。準備に終わりがなかった。

読んだあとのあなた 聞かれることを自分で設定できる。 ESに書いた内容が面接の議題になるので、自分が最も準備した領域に話を引き込める。

明日からやること

  • やめる: 想定問答集を作ること
  • 始める: ES提出前に3点セットをA4一枚に書き出し、各設問にどれを担わせるかを割り当てること。深掘りされて困ることは書かない
前の記事ESの設問は、すべて3点セットのどれかを検査している — 自己分析系の設問が