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面接解体新書第4弾|ESと書類選考

ESの出来が決めているのは、書類通過率ではなく面接の勝率である

ESを何度書き直しても、手応えがない。

あるいは逆に、書類は通るのに、そのあとの面接で落ちる。どちらの症状なのかを区別しないまま、とりあえずESを直している。

この記事では、選考には性質のまったく違う関門が2つあることを示す。そして、どちらの症状かによって、直すべき場所が正反対になることを示す。


「ESの書き方が悪いから落ちる」という通説

30社落ちていた時期、私は原因がESにあると信じていた。書き方が下手なのだろう、構成が悪いのだろう、内容に説得力がないのだろう。だから私は、ESを書き直し続けた。

結果は変わらなかった。当時の本当の原因はWebテストのスコアであり、書類選考は学歴とWebテストという定量指標で機械的に処理されていた。ESの本文は、そもそも読まれていなかった。

ここで、当然の疑問が生じる。

ESの本文が読まれていないなら、「通過するESと落ちるESの違い」など存在しないのではないか。

この問いに、正面から答えるのが本記事である。そして私の答えはこうである。

違いは存在する。ただし、その違いが決めているのは書類通過率ではない。面接での勝率である。

以下、この結論を導出したうえで、では具体的に何が違うのかを構造として示す。


第1章: 選考には関門が2つあり、ESが効くのは2つ目である

関門1: 定量指標による足切り

大手企業には数千通のESが届く。これを限られた採用メンバーが精読することは、物理的に不可能である。だから、ここは定量指標で機械的に処理される。学歴(一定水準を満たしているか)と、Webテストのスコアである。

この関門で、ESの本文は評価されていない。 私自身の観測がそれを裏づけている。特定のWebテスト形式だけは得意だったので、その形式を使う企業には全通した。それ以外の形式を使う企業には全落ちした。ESは同じ内容を使い回していたにもかかわらず、である。

関門2: ESと面接による評価

足切りを越えた候補者は、面接に進む。ここで初めて、ESの本文が読まれる。

正確に言えば、面接官はESを丁寧に精読しているわけではない。特に選考の終盤に出てくる社員は忙しく、面接の直前に目を通す程度である。だが、少なくとも「読まれている」状態にはなる。そして面接官は、そのESを見ながら質問を組み立てる。

つまり、ESは面接の議題を規定する文書である。

2つの関門を分けると、矛盾は消える

この2つを分離すると、冒頭の疑問は解消する。

関門1: 書類選考

  • 判定材料は、学歴とWebテストのスコア
  • ESの本文は、ほぼ読まれない
  • したがって、ESの出来はここに影響しない

関門2: 面接

  • 判定材料は、ES本文と面接での発言
  • ESの本文は読まれる。そして面接の議題を規定する
  • したがって、ESの出来がここで効く。決めているのは面接での勝ちやすさである

Q1(30社落ちた原因はESではなかった)が説明しているのは関門1である。本記事が説明するのは関門2である。 同じ選考プロセスの、異なる関門の話をしているにすぎない。

私自身の行動が、この分離を裏づけている

そして、私はこの分離を、自分の行動でそのまま実演していた。当時は無自覚だったが、振り返ると徹底している。

フェーズ1(書類を通すため): ESの中身は一切変えなかった。 30社落ちていた時期に使っていたESと、通るようになってからのESは、同じ内容である。書き直していない。変えたのはWebテストの対策だけで、それによって書類通過率は8割まで上がった。

フェーズ2(面接で勝つため): 本選考の前に、ESを改善した。 書類が通るようになったあと、私は本選考に向けてESを書き直している。だが、その目的は書類を通すことではなかった。面接で話す内容を組み立てるためである。

この2つを並べると、私が何をしていたかがはっきりする。

書類を通すためにはESを触らず、面接で勝つためにESを触った。

これが、本記事の主張そのものである。 私は理屈を先に持っていたわけではない。実際にやってみて結果が出た手順を、あとから構造として言語化しただけである。

裏を返せば、多くの人が消耗している「書類が通らないからESを書き直す」という作業は、手を入れる場所を間違えている。 書類が通らないなら、直すべきはWebテストである。ESを直すのは、書類が通るようになってからでよい。

したがって、本記事で言う「通るES/落ちるES」とは、書類で弾かれるESのことではない。面接官に不利な議題を持たせてしまうES、深掘りに耐えられないES、3点セット(①御社の業務/②御社で活躍できる素養/③御社を辞めない理由)のどれも証明していないESのことである。


第2章: ESとは何のための文書なのか

関門2でESが果たしている機能を、正確に定義しておく。

ESは、面接で何を話すかを自分で決めるための、事前打ち合わせ資料である。

面接官は、手元のESを見ながら質問を組み立てる。ということは、ESに書いた内容が、面接の議題を規定している。 これは受験者にとって、極めて有利な構造である。自分が話したいテーマを、自分で設定して提出できるということだからだ。

この構造を活かすなら、作業の順序はこうなる。

  1. 志望企業・職種について、3点セットを洗い出す(①御社の業務/②御社で活躍できる素養/③御社を辞めない理由)
  2. 面接で話したいことを決める(=3点セットの証明の設計)
  3. それに誘導するためのESを書く

逆ではない。ESを書いてから面接で話すことを考えるのでは、せっかくの議題設定権を放棄していることになる。

そして、ここから「通るES/落ちるES」の判定基準が導かれる。

通るES = 面接官に、自分に有利な質問をさせるES

落ちるES = 面接官に、答えられない質問をさせるES/そもそも質問を思いつかせないES


第3章: 落ちるESに構造的に欠けている4つのもの

では、具体的に何が違うのか。私の整理では、落ちるESには次の4つのうちいずれかが欠けている。いずれも文章力の問題ではなく、設計の欠落である。

欠落1: どの証明項目を担当する文書なのかが決まっていない

症状

自己PRを読んでも、ガクチカを読んでも、「この人はこういう人です」という自己紹介にしかなっていない。何を証明しようとしている文書なのかが分からない。

なぜ落ちるのか

面接官が組織に報告する文章に変換できないからである。面接官は面接後、人事あるいは自部門に対して、合否とその判断理由を報告している。私は現職で採用活動に携わっており、この運用を内側から見ている。報告に載るのは「この人物は当社で活躍し、かつ辞めない」という一点であり、そこに紐づかない情報は書きようがない。

修正

各設問に、3点セットのどれを担わせるかを先に割り当てる。

設問 → 担う証明

  • ガクチカ … ②御社で活躍できる素養
  • 自己PR … ②御社で活躍できる素養
  • 志望動機 … ③御社を辞めない理由(+①御社の業務)
  • 入社後にやりたいこと … ①御社の業務 + ③御社を辞めない理由
  • 自己分析系の設問 … ③御社を辞めない理由

欠落2: 結論が抽象化されておらず、ペルソナに寄っていない

症状

  • 「私の強みはコミュニケーション能力です」
  • 「私は主体性のある人間です」

いずれも汎用語である。営業でもエンジニアでも研究職でも同じ言葉が使える。

なぜ落ちるのか

どの職種にも当てはまる言葉は、どの職種の合格理由にもならない。 面接官の報告文に「コミュニケーション能力が高いとのこと」と書いても、上長は「で、うちで活躍するのか」と聞き返すだけである。

修正

志望職種の業務から導いた素養を、業務語で書く。

  • 「コミュニケーション能力」→「ステークホルダー間の合意形成」(SIerのPM)
  • 「行動力」→「失敗を前提に置いて試行回数を積める」(法人営業)

②の定義は、自分の想像で決めない。説明会や逆質問で「一番優秀だと思う方の特徴を教えてください」と聞けば、業務の性質を踏まえた優秀さの定義がそのまま手に入る。

欠落3: 目標設定と結果の定義がないため、「結果」が結果に見えない

症状

「サークルの代表として、新歓活動の運営を担当しました。多くの人と協力しながら、無事にやり遂げることができました」

なぜ落ちるのか

サークル活動やアルバイトのように、既存の仕組みを維持する役割を担った経験は、結果の定義から始めなければならない。 起業した、大会で優勝したといった派手な実績は、社会的に共有された物差しの上に載っているので説明不要で伝わるが、地味な素材にはその物差しがない。

物差しを自分で定義しないまま「やった」と書くと、聞き手にとって情報量がゼロになる。大学生の多くがサークルに所属している以上、活動したこと自体は何も示さない。

修正

「◯◯をやった」ではなく「◯◯を成し遂げた」という結果ベースの構文に変換する。

  • 悪い: 「新歓活動の運営を担当しました」
  • 良い: 「前年比で新入部員の定着率を改善しました」

後者は、結果を自分で定義している。定義した以上、「なぜ定着率が課題だったのか」を説明する責任が生じるが、その説明こそが、思考の過程を見せる場所になる。

欠落4: 課題特定が因数分解されておらず、過程の再現性が示されていない

症状

課題から解決策へ、理由なしに飛んでいる。「集客が課題だったので、SNSを活用しました」のような記述。

なぜ落ちるのか

派手な実績が評価されるのは、実績そのものではなく、それを出した過程に再現性があるからである。再現性を示すには、「なぜその打ち手を選び、他を選ばなかったのか」という判断が必要になる。判断がなければ、成果は偶然と区別がつかない。

修正

課題を因数分解してから、どこがボトルネックかを特定する。

「集客が伸びない原因を、①告知が届いていない ②届いているが興味を持たれていない ③興味はあるが来場のハードルが高い、の3つに分解した。実際に来場者にヒアリングしたところ、①ではなく③が主因だと判断したため、開催場所と時間帯を変更した」

この記述には、分解と判断がある。分解と判断が、再現性の実体である。


第4章: 4軸チェックリスト

提出前に、次の項目を自問する。

  • [ ] この設問は、3点セットのどれを証明する文書か、一言で言えるか
  • [ ] 結論に置いた強みは、業務語になっているか(汎用語になっていないか)
  • [ ] その強みは、志望職種の業務から導出したものか(自分の想像ではないか)
  • [ ] 「◯◯をやった」ではなく「◯◯を成し遂げた」という結果ベースの構文になっているか
  • [ ] 結果を自分で定義しているか(定義がないまま「頑張った」で終わっていないか)
  • [ ] 課題を因数分解したうえで、どこがボトルネックかを特定しているか
  • [ ] 打ち手について、「なぜそれを選び、他を選ばなかったか」が書いてあるか
  • [ ] ここに書いたことを深掘りされて、3階層まで答えられるか
  • [ ] 面接官の報告文(「この学生は◯◯だから通した」)が、この文章から書けるか

最後の2項目が本質である。ESは面接の議題を設定する文書なので、書いた瞬間、それは議題になる。深掘りされて困ることは、書いてはいけない。


第5章: ESを直す作業とは、文章を推敲する作業ではない

以上をまとめると、実務上の指針は一つに集約される。

ESの改稿が効かないと感じるとき、直すべきは文章ではなく企業研究である。

4つの欠落を見返してほしい。どれも、文章力で解決するものが一つもない。

  • 欠落1(証明項目が未定)→ 3点セットの洗い出しが済んでいない
  • 欠落2(汎用語)→ ②の定義を現場から取っていない
  • 欠落3(結果の定義がない)→ 何を成果と呼ぶかを自分で決めていない
  • 欠落4(因数分解がない)→ 自分の経験を構造化していない

すべて、書く前の作業の欠落である。

だから、ESを何度書き直しても手応えが変わらないなら、書き直しをやめて、企業研究と経験の棚卸しに戻るべきである。私が30社落ちていた時期にやっていたのは、まさにこの「効かない書き直し」だった。当時はWebテストが直接の死因だったが、仮に足切りを越えていたとしても、あのESでは面接を勝ち切れなかったと考えている。

そして、ここでもう一度、手を入れる順序を確認しておきたい。

症状 → 直すべきもの

  • 書類が通らない … Webテスト。ESではない
  • 書類は通るが、面接で落ちる … ES。ただし文章ではなく、3点セットの設計

この2つを取り違えている限り、どれだけ努力しても結果は動かない。 私が30社落ちながらESを書き直し続けていたのは、上段の症状に下段の処方を当てていたからである。


第6章: 限界の明示

正直に、この整理が当てはまらない可能性についても書いておく。

第一に、応募者数が少ない企業では、書類選考の段階からESが読まれている可能性が高い。 数千通が届くから読めないのであって、数十通なら読める。中堅企業、ベンチャー、通年採用枠、スカウトやリファラル経由の応募では、最初からES本文が評価対象になっていると考えるほうが自然である。この場合、ESの出来は書類通過率にも直接効く。

第二に、定量指標による足切りの「後」の母集団では、ESが順位づけに使われている可能性がある。 学歴とWebテストのスコアが同水準の受験者が並んだとき、最後に差をつける材料はES本文しかない。この可能性は否定できない。

第三に、私が観測できたのは自分の選考結果だけである。 採用側がESをどう処理しているかの内部の詳細まで見たわけではない。本記事の整理は、自分の観測と、現職で見ている採用運用から組み立てた理解である。

ただし、これらの限界を認めたうえでも、実務上の結論は変わらない。 ESが書類通過に効く企業でも効かない企業でも、「3点セットを証明する文書として設計する」という指針は同じである。どちらの前提でも損をしない。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 症状を区別せずに、ESの文章を直していた。だから、直しても結果が動かないことがあった。

読んだあとのあなた 自分がどちらの症状かを判定できる。 書類が通らないならWebテスト、面接で落ちるならESの設計。手を入れる場所を間違えなくなる。

明日からやること

  • やめる: 書類段階で落ちているのに、ESの文章を推敲すること
  • 始める: ESの各設問に「3点セットのどれを担わせるか」を割り当て直すこと。ESは書類を通す文書ではなく、面接の議題を設定する資料である
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