面接解体新書就活・転職の面接・選考攻略メディア
面接解体新書第5弾|企業分析と志望動機

業界研究が先で、企業研究が後である — 順番には理由がある

多くの人は、企業研究から始めて詰まる

就活を始めた人の多くは、まず企業を調べる。志望企業のホームページを開き、事業内容を読み、採用ページを読む。

これは自然な行動だが、順序としては誤っていると私は考えている。企業研究から始めると、集めた情報を評価できないからである。

たとえば、ある企業について「大規模案件に強い」という情報を得たとする。これは良いことなのか、悪いことなのか。強いと言われても、比較対象がなければ「強い」の意味が定まらない。何と比べて強いのか。その業界では大規模案件に強いことが差別化になるのか、それとも全社が同じことを言っているのか。

判定するには、業界の構造を知っている必要がある。 だから業界研究が先になる。

以下、それぞれが何のための作業なのかを整理したうえで、順序の理由を説明する。

業界研究は、何のためにやるのか

目的1: ビジネスモデル(収益構造)を理解する

業界研究の第一の目的は、その業界が「誰から、何で、どうやって」お金を得ているのかを理解することである。

  • SIerであれば、顧客企業からシステムの構築・運用の対価を得る。人月単価と稼働期間が売上を規定する
  • 人材紹介であれば、企業から成功報酬を得る。紹介した人材の年収に対する一定割合が収益になる
  • 広告代理店であれば、広告主から出稿の対価を得る。媒体費に対するマージンが収益源になる

なぜこれが必要か。収益モデルが分からなければ、業界間の比較ができないからである。

「顧客のビジネスを支援したい」という軸を持っている人がいたとする。IT、金融、人材、広告、コンサル。いずれも顧客のビジネスを支援している。では、どれを選ぶべきか。

この問いに答えるには、それぞれの業界が「どういう形で顧客に価値を届けているか」を理解する必要がある。 ITはシステムという仕組みを通じて、人材は人という資源を通じて、金融は資金を通じて、広告は認知を通じて価値を届けている。届け方が違えば、日々の仕事の中身が違い、求められる素養が違う。

そして、この理解が①御社の業務と②御社で活躍できる素養の土台になる。業務の中身を知らずに、そこで活躍する素養を導出することはできない。

目的2: 将来の変化を予測する

第二の目的は、その業界が10年スケールでどう変わると言われているかを掴むことである。

これは主に、最終面接での逆質問と、③御社を辞めない理由のために使う。

「業界は10年後に◯◯という状態になっていくと私は考えています。そうであれば、IR資料を拝見した限り、御社は△△の方向を狙っていかれると読みましたが、この理解で合っていますでしょうか」

この種の質問を成立させるには、業界の将来像に関する自分なりの見立てが必要になる。

準備方法は、業界の変遷に関する書籍を1冊読むことで足りる。 専門家になる必要はない。10年スケールの変化を語る語彙を手に入れることが目的である。そこで得た見立てを自分の仮説として提示し、現場の社員や役員に印象を聞く、という流れになる。

企業研究は、何のためにやるのか

目的: 「他社でもよくないですか」への回答を作る

企業研究の目的は、一つに絞ってよい。競合他社との違いを理解することである。

面接で必ず聞かれる「なぜ他社ではなく当社なのですか」に答えるための材料を集める作業、と言い換えてもよい。

ここで注意すべきなのは、企業研究で分かるのは、あくまで「特徴」であるという点である。特徴そのものには、良し悪しがない。

  • 「数年単位の大規模案件が中心」
  • 「特定業界に顧客基盤が集中している」
  • 「若手のうちから裁量が大きい」

これらは事実の記述であり、それ自体は志望理由にならない。前提として自分の性質・就活の軸を説明することで初めて、その特徴が長所または短所として解釈できるようになる。

したがって、企業研究の成果は、次の構文に流し込まれる。

「私は◯◯(軸)を重視している。その前提に立つと、御社の▲▲という特徴は、私にとって長所である。一方、A社の△△という特徴は、この前提では短所になる」

特徴を集めるのが企業研究、それを評価に変換するのが軸の仕事である。 両方が揃って初めて、志望動機が成立する。

なぜ業界研究が先なのか

順序の理由は、次の一点に尽きる。

各企業の強みとは、競合に負けないための工夫である。したがって、競争環境を理解していなければ、強みが強みとして認識できない。

これを分解する。

企業がある特徴を持っているのは、偶然ではない。その業界の競争の中で、他社に対して優位に立つために選んだ戦略の結果である。

  • 「特定業界に顧客基盤が集中している」のは、その業界の商習慣に特化することで参入障壁を作っているから
  • 「大規模案件に強い」のは、大規模案件を回せる人員と管理体制が競合との差になるから
  • 「若手に裁量を与える」のは、人材の獲得競争で待遇以外の差別化要因が必要だから

どの特徴も、競争環境を前提にして初めて意味が読める。 競争環境を知らずに特徴だけを読むと、「へえ、そうなんだ」で終わる。読めても、面接で語れるだけの解釈が付かない。

逆に、業界の構造を理解してから企業を見ると、次のように読める。

「この業界は人月単価が収益を規定するので、単価を上げるには上流工程に食い込むしかない。御社が上流のコンサルティング機能を強化しているのは、その構造への対応である。だとすれば、この会社で求められるのは、顧客の経営課題を業務レベルに翻訳できる人材だろう」

この読み方ができると、①御社の業務、②御社で活躍できる素養、③御社を辞めない理由が、企業研究から同時に導出できる。

作業の全体像

順序を整理すると、次のようになる。

【0】就活の軸を定める → 評価の前提ができる

【1】業界研究

  • ビジネスモデル(収益構造)を理解する
  • 10年スケールの変化を掴む(書籍1冊)

→ 業界間の比較が可能になり、①②の土台ができる

【2】業界を2〜3に絞る

【3】企業研究

  • 競合他社との違い(特徴)を一覧化する
  • IR・中期経営計画で方向性を確認する

→ 軸を前提に、特徴を長所/短所に変換できる

【4】3点セットを書き上げる

  • ①御社の業務
  • ②御社で活躍できる素養
  • ③御社を辞めない理由

【0】が最初に来る点に注意してほしい。 軸がないと、【1】で業界を比較することも、【3】で特徴を評価することもできない。企業分析で消耗する人の多くは、軸が固まらないまま情報を集めているのだと私は考えている。

各段階の終了条件

作業を終わらせるための条件を示しておく。ここが定義できていないと、企業分析は際限なく続く。

業界研究の終了条件 - その業界が「誰から、何で、どうやって」収益を得ているかを、他人に1分で説明できる - 他の業界と比べたとき、価値の届け方がどう違うかを一文で言える - 10年後にどういう変化が起きると言われているかを、2〜3点挙げられる

企業研究の終了条件 - 主要な競合3社と志望企業の特徴を、項目を揃えて並べられる - 自分の軸に照らして、志望企業の特徴が長所である理由を一文で言える - 同じ軸に照らして、他社の特徴が短所である理由を一文で言える - 中期経営計画から、5〜10年後の方向性を2〜3点抜き出せる

この条件を満たしたら、そこで終わりである。 それ以上調べても、面接で使う場所がない。

注意点

第一に、業界研究に時間をかけすぎないこと。 業界研究の目的は、企業を評価できるようになることであって、業界の専門家になることではない。書籍1冊と、業界地図のような概説資料で十分である。むしろ時間を配分すべきなのは、企業ごとのIR資料の読み込みと、社員から直接情報を取ることのほうである。

第二に、業界を絞りきれないうちに企業研究を始めないこと。 志望業界が5つあるまま各業界の企業を深掘りすると、作業量が指数的に増える。業界研究の段階で2〜3業界に絞ってから、企業研究に入るべきである。

第三に、業界研究で得た知識は、そのまま面接で披露しても価値が薄い。 業界動向を暗記して語っても、②や③の証明にはならない。価値が出るのは、業界の構造理解を土台にして、「だから御社ではこういう素養が必要なはずだ」という自分の仮説を組み立てたときである。知識は、加工して初めて材料になる。

第四に、業界と企業の境界が曖昧な領域もある。 特に、複数業界にまたがる企業(総合商社、総合コンサルティングファーム等)では、業界の定義自体が難しい。その場合は、業界ではなく「その企業が担っている機能」から入るほうが実務的である。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 企業研究から始めて、何を見ればいいか分からなくなっていた。ホームページを読んでも頭に残らなかった。

読んだあとのあなた 業界を先に見るので、企業の情報を評価できる。「この特徴は、この業界の競争環境ではこういう意味だ」と読めるようになる。

明日からやること

  • やめる: 志望企業のホームページから読み始めること
  • 始める: 先に業界の収益モデルを1分で説明できるようにすること。強みとは、競合に負けないための工夫である
前の記事「なぜ他社ではなくうちなのか」は、企業の特徴からではなく、自分の軸という前提