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面接解体新書第5弾|企業分析と志望動機

「なぜ他社ではなくうちなのか」は、企業の特徴からではなく、自分の軸という前提から作る

この質問が難しいのは、企業の側に答えがないからである

「なぜ他社ではなく当社なのですか」は、志望動機の中で最も答えにくい質問である。

答えにくい理由ははっきりしている。企業を調べても、この問いの答えは出てこないからである。

企業研究をすると、その企業の特徴が分かる。「大規模案件に強い」「特定業界に深い顧客基盤を持つ」「若手のうちから裁量が大きい」。だが、これらはいずれも事実の記述であって、選ぶ理由ではない。 そして、同じことを競合他社について調べても、同じように特徴が出てくる。特徴を並べただけでは、どちらを選ぶべきかは決まらない。

私の結論はこうである。

企業の特徴それ自体には、良し悪しがない。自分の軸という前提を置いて初めて、特徴は長所または短所に変換される。

だから、「なぜ他社ではなくうちなのか」の答えは、企業の側にではなく、自分の軸と企業の特徴の掛け算の中にある。

作り方: 就活の軸から逆算したロジックツリー

私が実際にやっていたのは、次の作業である。

ステップ1: 就活の軸を一文で定める

これがすべての起点である。軸がない状態で企業研究をしても、集めた情報を評価できない。

軸は、「自分の性質 → 成し遂げたいこと」という形で作る。たとえば、

「顧客のビジネスそのものを前に進める仕事がしたい。自分が主役になるより、相手の成果を最大化することに達成感を覚えるため」

ステップ2: 軸に該当する業界を列挙する

軸から、条件を満たす業界を洗い出す。上の軸であれば、IT(SIer・コンサル)、金融、人材、広告、商社など、顧客のビジネス支援を担う業界が広く該当する。

ステップ3: 各業界の主要な競合企業を網羅して一覧化する

業界ごとに、主要企業とその特徴を一覧にする。

就活の軸

  • 業界A
  • A1社(特徴:…)
  • A2社(特徴:…)
  • A3社(特徴:…)
  • 業界B
  • B1社(特徴:…)
  • B2社(特徴:…)
  • 業界C
  • C1社(特徴:…)
  • C2社(特徴:…)

ここで書き込むのは、あくまで特徴である。この段階では良し悪しの判定をしない。判定は次のステップで行う。

ステップ4: 軸という前提を置いて、特徴を長所/短所に変換する

ここが核心である。同じ特徴が、軸によって長所にも短所にもなる。

数年単位の大規模案件が中心 - 軸が「腰を据えて大きな仕事をしたい」なら: 長所(腰を据えて取り組める) - 軸が「短期間で多様な経験を積みたい」なら: 短所(回転が遅い)

案件サイクルが数か月と短い - 軸が「腰を据えて大きな仕事をしたい」なら: 短所(深く関われない) - 軸が「短期間で多様な経験を積みたい」なら: 長所(経験の密度が高い)

特定業界に顧客基盤が集中 - 軸が「腰を据えて大きな仕事をしたい」なら: 長所(業界知見が深く積める) - 軸が「短期間で多様な経験を積みたい」なら: 短所(視野が固定される)

幅広い業界を横断 - 軸が「腰を据えて大きな仕事をしたい」なら: 短所(専門性が育ちにくい) - 軸が「短期間で多様な経験を積みたい」なら: 長所(多様な業界を見られる)

この整理ができれば、「なぜ他社ではなくうちなのか」と「なぜ他社ではないのか」が、同時に作れる。

  • 特徴をと捉える → その企業を選ぶ理由(志望動機)になる
  • 特徴をと捉える → その企業を選ばない理由(他社ではない理由)になる

しかも、この2つは同じ表から出てくる。わざわざ他社を貶める材料を探す必要がない。 同じ事実を、自分の軸に照らして評価しているだけである。

ステップ5: 回答文に組み立てる

構文はこうなる。

「私は◯◯(軸)を重視しています。その観点で申しますと、A社は△△という特徴があり、これは□□という点で私の軸とは合いません。一方、御社は▲▲という特徴があり、これは私が◯◯を実現するうえで最も適していると考えています」

軸 → 他社の特徴の評価 → 御社の特徴の評価、の順である。軸を最初に提示することで、以降の評価がすべて論理的に導出される形になる。

なぜこの構文が強いのか

面接官の側から見ると、この回答は報告文に直接転記できる。

「本人の軸は◯◯であり、当社の▲▲という特徴がそれに合致することを、他社比較のうえで説明できていた」

これは、③御社を辞めない理由の証明になっている。軸と会社の特徴が合っているなら、齟齬が生じにくく、離脱しにくい。

対して、軸を示さずに「御社の▲▲に魅力を感じました」とだけ言うと、報告文は「当社の特徴に魅力を感じているとのこと」で止まる。なぜ魅力なのかが説明されていないので、辞めない根拠にならない。

本音では第一志望でない場合

さて、実務的な問題に入る。

面接では「弊社は第一志望ですか」と聞かれる。ほとんどの受験者は、複数社を並行して受けているので、全社が第一志望であるはずがない。

私の立場は明確である。本音では第一志望でなくても、第一志望だと言う必要がある。

理由は、③御社を辞めない理由の構造から導ける。企業は、回収前に離脱する可能性が高い人材には投資できない。「第二志望です」と表明することは、離脱可能性が高いことを自己申告するのと同じである。面接官は、その情報を報告文に書かざるを得なくなる。 書かれた時点で、合格は極めて難しくなる。

ただし、単に「第一志望です」と口で言うだけでは、証明にならない。言葉は誰でも言える。そして、言葉だけの表明は熱量として伝わらない。

「面接官の人生を肯定する」という技法

私が実際に使っていたのは、次の考え方である。

面接の場では、面接官の人生を肯定するマインドで臨む。

具体的には、こうする。

  1. 逆質問などを使って、面接官自身の話を引き出す。 どういう仕事をしてきたか、なぜこの会社を選んだか、印象に残っている案件は何か。
  2. その話を聞いて、魅力的だと感じたポイントを、自分の言葉で言語化して返す。

たとえば、面接官が「顧客の業務が本当に変わっていく瞬間に立ち会えるのが面白い」と語ったとする。それを受けて、こう返す。

「いまのお話で、御社を志望する理由が自分の中でより明確になりました。私は、自分が主役になることより、相手の成果が変わる瞬間に立ち会うことに達成感を覚えるタイプです。◯◯様が仰った『顧客の業務が変わっていく瞬間』というのは、まさに私が仕事に求めているものだと感じました」

面接官が語ったキャリアの魅力を言語化して返すことは、そのまま「御社でのキャリアの魅力」を肯定することになる。 そして、それは志望度の表明として受け取られる。

なぜこれが「第一志望です」と言うより強いのか。発言内容ではなく、発言の前提が志望度を証明しているからである。面接官の話に具体的に反応できているという事実が、その場の集中度と関心の高さを示している。これは演技では作りにくい。

正直に書いておくべきこと

ここは、誠実に留保を書いておく必要がある。

第一に、これは内定を目的関数に置いた場合の最適解である。 入社後のミスマッチという別の論点が存在する。第一志望ではない会社に「第一志望です」と言って内定を得た場合、その内定を受諾するかどうかは別の判断であり、そこで自分に嘘をつくと、入社後に苦しむのは自分である。面接での表明と、意思決定は分けて考えるべきである。

第二に、「面接官の人生を肯定する」という技法は、嘘をつく技術ではない。 むしろ逆で、その会社の魅力を、面接官との対話の中で実際に発見する作業だと私は考えている。事前の企業研究では見えなかった魅力が、社員の話を聞くことで初めて見えることは、実際によくある。第一志望でなかった会社が、面接を重ねるうちに第一志望になることもある。この技法は、その発見を能動的に起こしにいく方法である、という理解のほうが実態に近い。

第三に、志望度に関する表明と、事実に反する経歴の申告はまったく別物である。 前者は評価される側の主観の表明であり、後者は虚偽申告である。境界線は明確に引くべきである。

実行チェックリスト

  • [ ] 就活の軸を、「自分の性質 → 成し遂げたいこと」の形で一文にした
  • [ ] 軸に該当する業界を3つ以上列挙した
  • [ ] 各業界の主要企業を網羅し、特徴を一覧化した(この段階では良し悪しを判定しない)
  • [ ] 軸という前提を置いて、各社の特徴を長所/短所に変換した
  • [ ] 志望企業の特徴が長所になる論理と、他社の特徴が短所になる論理を、それぞれ一文で書いた
  • [ ] その論理を「軸 → 他社の評価 → 御社の評価」の順に並べた
  • [ ] 面接官が報告文に書ける一文(「本人の軸は◯◯であり、当社の▲▲がそれに合致する」)が完成しているか確認した

注意点

第一に、他社を否定的に語りすぎないこと。 「A社は◯◯だから合わない」という評価は、あくまで自分の軸に照らした相対評価として述べるべきである。企業そのものを貶す言い方をすると、面接官は「この人物は当社についても、外では同じように言うのだろう」と受け取る。

第二に、軸が抽象的すぎると、この方法は機能しない。 「成長したい」「社会に貢献したい」といった軸では、企業の特徴を長所・短所に変換できない。どの企業も成長できるし、どの企業も社会に貢献しているからである。軸は、それによって企業を選別できる程度に具体的でなければならない。 選別できない軸は、軸として機能していない。

第三に、ロジックツリーは網羅性が命である。 主要な競合を落とすと、「では◯◯社はどうですか」と聞かれたときに答えられない。業界内の主要プレイヤーは、少なくとも名前と特徴のレベルでは押さえておく必要がある。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 「なぜ他社ではなく当社なのか」に答えられなかった。企業をいくら調べても、答えが出てこなかった。

読んだあとのあなた 答えが企業の側にはないと分かっている。自分の軸を前提に置いて初めて、特徴が長所/短所に変換されることを知っている。

明日からやること

  • やめる: 企業の情報の中から「決め手」を探すこと
  • 始める: 就活の軸を一文にしてから、各社の特徴を一覧化し、軸に照らして長所/短所に振り分けること
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