面接解体新書就活・転職の面接・選考攻略メディア
面接解体新書第6弾|逆質問と当日の振る舞い

逆質問は「疑問を解消する時間」ではない——加点を取りにいく最後の持ち時間の設計

「何か質問はありますか」を、質問の時間だと思っている限り加点は取れない

面接の終盤で必ず訪れる「最後に何か質問はありますか」。この時間について、多くの就活生は二種類の準備をしている。ひとつは「聞きたいことがないと志望度が低いと思われるので、とりあえず何か聞く」という消極的な準備。もうひとつは「入社後のミスマッチを防ぐために、自分が本当に知りたいことを聞く」という真面目な準備である。

前者は言うまでもないが、後者も、内定を取ることを目的関数に置いた場合には最適ではない。なぜなら、どちらも逆質問を「自分の疑問を解消する時間」として扱っているからだ。

私は逆質問を、疑問を解消する時間だとは考えていなかった。思考の深さと知識の量を見せることで、加点を狙って設計する時間だと考えていた。もっと露骨に言えば、面接の中で唯一、受験者の側が話題を選べる持ち時間である。ここを情報収集だけに使ってしまうのは、与えられた持ち時間を放棄しているに等しい。

逆質問の位置づけ——面接で唯一、自分が話題を選べる時間

なぜそう言えるのか。面接の構造から順に導出する。

面接官が持っている判断材料は二つしかない。①ESと、②面接中に受験者が発した言葉である。この二つ以外に、面接官への入力は存在しない。面接官はその二つを材料にして、面接終了後に人事部あるいは自部門に対して、合否とその判断理由を報告している。私は現職で採用活動に携わっているため、面接官に渡される情報と、面接官が求められる報告の形式を、渡す側の立場から見ている。面接官は「自分がその学生を好きかどうか」で決めているのではない。「上司や人事に説明できる理由があるかどうか」で決めている。

つまり面接とは、面接官に合格を出す理由を渡す時間である。そして渡すべき材料は、突き詰めると三つしかない。①御社の業務(その会社・職種で実際に何が行われているかの理解)、②御社で活躍できる素養(①を踏まえたとき、活躍する人が持っている資質を自分が持っているという証明)、③御社を辞めない理由(中長期の自分の方向性と会社の方向性が一致しているという証明)。本ナレッジではこれを3点セットと呼んでいる。

ここで重要なのは、逆質問もまた「②面接中に受験者が発した言葉」に含まれるという単純な事実である。質問文であっても、それは受験者が発した言葉であり、面接官の判断材料になる。だとすれば、逆質問を3点セットの証明に使わない理由はどこにもない。

逆質問が持つ独自の価値は、話題選択権がこちらにあることだ。面接の大半の時間は、面接官が投げた質問に受験者が答えるという形式で進む。何を話すかは面接官が決めている。ところが逆質問の時間だけは、何を話題にするかを受験者が決められる。3点セットのうち、その面接でまだ十分に証明できていない項目を、自分から選んで補強できる。これが最後の持ち時間だと言う理由である。

実例①:優秀な人の定義を、仮説形式で問う

私が繰り返し使っていた逆質問の一つ目は、「この会社で一番優秀だと思う人の特徴」を聞くものである。この質問には、レベルの異なる二つの形がある。

素の質問形——情報を取りに行くための質問

素の形はこうだ。

「御社で一番優秀だなと感じる方は、どのような特徴を持っている方でしょうか」

この質問が返してくれる情報は、単なる人物評ではない。優秀さの定義は業務の性質から逆算されるので、答えの中には必ず「その仕事が何をする仕事なのか」という情報が混ざってくる。つまり①御社の業務と②御社で活躍できる素養が、面接官自身の言葉でセットになって出てくる。

たとえば営業職でこの質問をすると、こういう答えが返ってくることがある。「アポイントが取れても成約する確率は決して高くない。だから試行回数を増やすことが必要になる。優秀な人はすべからく失敗を怖がらない」。この一言の中に、業務の性質(成約率が低く、試行回数が成果を決める)と、そこから導かれる素養(失敗を怖がらない)が両方入っている。

あとは、ここで得た情報をガクチカと志望動機の側に接続すればよい。「学生時代のサークル活動では何度も失敗したが諦めなかった。その結果として成果を残した。失敗を怖がらないことが自分の長所なので、営業ではそれを活かせると考えている」。これは受験者が勝手に主張した強みではなく、その会社の社員が定義した優秀さに、自分の経験を当てはめたものになる。面接官が組織に報告するとき、これほど書きやすい材料はない。

上位形——仮説をぶつける質問

ただし、素の質問形には弱点がある。情報は取れるが、その場では加点になりにくい。何も知らない人でも投げられる質問だからだ。

そこで上位形がある。同じことを、仮説の形で問う。

「先ほど伺った内容から、御社のこの職種は、顧客側の複数部門と自社の開発部隊の間に立って要件を固めていく仕事だと理解しました。だとすると、活躍されている方は、利害が対立する関係者から本音を引き出して、全員が納得できる落としどころを設計できる方が多いのではないかと考えたのですが、この理解は合っていますでしょうか」

あるいは営業職であれば、こうなる。

「御社の営業は、アポイントが取れても成約に至る確率はそれほど高くなく、試行回数を積み上げることが成果に直結する仕事だと理解しています。だとすると、活躍されている方は、失敗を恐れずに打席に立ち続けられる方なのではないかと考えたのですが、いかがでしょうか」

素の質問形と上位形は、聞いている内容自体はほとんど同じである。違うのは、答えを自分が持っていることを見せているかどうか、その一点だけだ。そしてこの一点が、加点になるかならないかを分ける。

フェーズによって使い分ける

私は選考のフェーズによって、この二つを使い分けていた。

一次面接では、素の質問形を使う。一次面接はガクチカ中心で、最低限の受け答えができれば通る段階だと考えていたので、逆質問は情報収集に充てた。ここで無理に仮説を立てても、材料がないので浅い仮説にしかならない。浅い仮説をぶつけると、面接官には「調べていない人が背伸びをしている」と映るリスクがある。それなら素直に聞いて、二次以降で使う弾を集めたほうがよい。

二次面接では、上位形を使う。二次面接ではガクチカと志望動機が半々になり、能力の確認がより本格的になる。ここで見せるべきは「活躍するために必要な素養への理解度が高いこと」なので、一次面接で得た情報をもとに仮説を構築し、仮説形式で質問する。

「一次面接で、御社の業務はこういう性質だと伺いました。その前提で考えると、活躍するためにはこういう素養が必要になると理解したのですが、その認識で合っていますでしょうか」

この形が成立するのは、一次面接で素の質問形を投げていたからである。つまり一次の逆質問は、二次の逆質問の準備でもある。逆質問は一回の面接で完結する道具ではなく、選考プロセス全体を通じて仕込みと回収を行う道具として設計できる。

実例②:10年後に目指す姿と、そこで必要になる能力を問う

もう一つの実例が、私が使っていた中では最上位の型である。会社が10年後にどこへ向かおうとしているのか、そしてそのとき自分たちにどんな能力が必要になるのかを、両方とも仮説の形で問う。

この型が最上位である理由は、3点セットのすべてを同時にアピールできるからだ。業界と会社の方向性を語ることが①御社の業務の理解の証明になり、そこで必要になる能力を語ることが②御社で活躍できる素養の議論に接続し、10年後という時間軸で自分を主語に置いて話すこと自体が③御社を辞めない理由の提示になる。加えて、IR資料を読み込んだという事実そのものが①と③の裏づけになる。

準備の手順

この質問は思いつきでは投げられない。準備には手順がある。

第一に、志望業界の変遷に関する書籍を一冊読む。専門書である必要はないが、その業界が過去にどういう構造変化を経てきて、これからどこへ向かうと言われているのかを、一冊分の分量でまとめて頭に入れる。ネット記事の断片ではなく書籍を選ぶのは、業界の話を時系列の物語として理解できるからだ。時系列で理解できていると、「これから先はこうなる」という予測を自分の言葉で言えるようになる。

第二に、志望企業のIR資料と中期経営計画を読む。ここで見るのは、その会社が5年後・10年後に何を成し遂げようとしているかである。私が企業分析で中心的に見ていたのは、他社と比較した強み、理念、業界、そしてIRの四つだが、この質問で使うのは主にIRである。

第三に、書籍から得た業界の将来像と、IRから読み取った会社の方向性を突き合わせて、自分の仮説として組み立てる。ここが最も重要な工程である。書籍に書いてあったことをそのまま引用するのではなく、「業界がこう変わるはずだから、御社はこう動くのだろう」という形に、自分で組み直す。書籍の内容をそのまま述べれば、それは読んだ本の紹介にしかならない。自分の仮説として提示して初めて、思考の産物として評価される。

第四に、それを現場の社員や役員にぶつけて、印象を聞く。

実際の質問の形

組み立てた仮説は、二段構えで投げる。

「業界に関する書籍を読んだ限り、この業界は今後10年で、システムを受託して作る仕事から、顧客の事業そのものの設計に踏み込む仕事へと重心が移っていくのではないかと考えています。その前提で御社のIR資料と中期経営計画を拝見したところ、御社はITを通じて顧客のビジネスモデルそのものを変革する方向に投資を集中させていくように読み取れました。この理解は合っていますでしょうか」

ここで一度、面接官に答えてもらう。そのうえで二段目を投げる。

「もしその方向に進むのであれば、10年後に中核を担っている我々の世代は、技術的な実装力だけではなく、顧客の事業構造を理解して打ち手を提案する力が必要になると考えたのですが、現場で見ていらっしゃるお立場からすると、この理解はいかがでしょうか」

一段目が①御社の業務と③御社を辞めない理由に効き、二段目が②御社で活躍できる素養に効く。そして二段目に対して面接官が「その通りだ」と答えた瞬間、その素養が「この会社で必要とされる素養」として、その面接の場に確定する。あとは、その素養を自分が持っていることが、ガクチカや自己PRで既に証明済みであればよい。

なお、最終面接で意識的に変えていたのはまさにこの点で、最終面接の評価軸は志望動機と志望度の確認に寄るため、逆質問も会社の理解度を示す方向に振っていた。中期経営計画を読んだ限り御社はこの領域に力を入れようとしている、ということはこういう素養を備えた人材が必要になるはずだ、この理解で合っているか——という形である。

なぜ「仮説形式」が効くのか——三つの構造

ここまで二つの実例を挙げたが、どちらも核は同じである。「教えてください」ではなく「こう理解しているが合っているか」という形を取っていること。この仮説形式がなぜ効くのかを、三つの構造に分けて説明する。

構造1:答えを持っていることの証明になる

質問には二種類ある。答えを持っていない人の質問と、答えを持っている人の質問である。

「御社の業務内容を教えてください」は前者だ。この質問は、その人が何も知らないという情報しか運ばない。対して「御社の業務はこういう性質だと理解しているが、合っているか」は後者である。この質問文には、質問者が既に持っている理解が丸ごと乗っている。

面接官が組織に報告する場面を想像すればわかりやすい。前者について報告できることは何もない。後者については「業務理解が深く、自分なりの仮説を持って面接に臨んでいた」と書ける。同じ「質問をした」という行為でも、報告できる材料になるかどうかがまったく違う。

質問という形式を借りているが、実質的にはプレゼンテーションである。これが仮説形式の一番の効能だ。

構造2:面接官は肯定するだけで会話が成立する

二つ目は、相手の負荷の問題である。

「教えてください」型の質問は、面接官にゼロから説明を組み立てさせる。一方、仮説形式の質問は、面接官がまず「その通りです」と言えば会話が成立する。相手にとって答えやすい。

さらに言えば、私は面接のマインドとして、面接官の人生を肯定する姿勢が良いと考えている。面接官の話を聞き出し、その話のどこが魅力的だったかを言語化できれば、それはその会社でのキャリアを肯定することになり、結果として熱量として受け取られる。仮説形式の質問は、この肯定の姿勢と構造的に相性がいい。こちらが立てた仮説を面接官が肯定し、こちらがその肯定を受けてさらに深掘りする、という会話は、最初から最後まで相手を肯定する方向に流れるからだ。

なお、仮説が外れていた場合も損はしない。面接官は訂正するために説明を始めるので、そこで正しい情報が手に入る。そして「なるほど、そういうことであれば、必要になるのはむしろこちらの力ということでしょうか」と受け直せばよい。面接官の発言は、自分にとってマイナスな内容でない限り基本的に肯定する。これは逆質問に限らず、面接全体を通じた原則である。

構造3:自分の発言量を減らせる

三つ目が、実は最も実利的である。

面接官の判断材料はESと自分の発言しかない。ということは、自分の発言をコントロールできれば結果はコントロールできる。裏返すと、発言量が増えるほど、余計なことを言って印象をマイナスに振ってしまう機会も増える。私は面接の最後の一言で墓穴を掘って落ちた経験があるので、この危険性は身をもって理解している。

仮説形式の逆質問は、面接官に話させる装置である。こちらは仮説を一度提示し、あとは面接官の回答に追加の質問を重ねていく。持ち時間の大半を面接官が話すことで埋められるので、自分が余計なことを言うリスクの総量が下がる。しかも、面接官が長く話せば話すほど、こちらは熱心に聞いているという評価を得やすい。

つまり仮説形式の逆質問は、加点を取りに行きながら同時に減点リスクを下げるという、面接の中では珍しい構造を持っている。これが私がこの型を繰り返し使っていた理由である。

逆質問を設計する手順

再現できる形にまとめる。

  1. その面接が選考プロセスのどの位置にあるかを確認する。一次なら情報収集、二次なら素養の理解度、最終なら会社の理解度が主眼になる。
  2. 3点セットのうち、その面接でまだ証明しきれていない項目を特定する。逆質問はその穴を埋めるために使う。
  3. 一次面接では素の質問形を投げ、面接官の回答をその場でメモする。特に「業務の性質」と「そこから導かれる素養」を分けて記録する。
  4. 二次面接以降は、一次で得た情報を仮説に組み直して投げる。「一次面接でこう伺った。その前提だとこうなると理解したが、合っているか」という形にする。
  5. 最終面接に向けては、業界の変遷に関する書籍を一冊読み、IR資料と中期経営計画を読む。両者を突き合わせて10年後の仮説を作る。
  6. 仮説は二段構えにする。一段目で会社の方向性、二段目でそこに必要な能力を問う。
  7. 面接官の回答は、自分にとってマイナスでない限り肯定する。そのうえで追加の質問を重ね、自分の発言量を最小限に抑える。

この方法の限界

最後に、この方法が効かない条件を明示しておく。

第一に、仮説形式は準備量に完全に依存する。書籍とIRを読んでいない状態で仮説形式だけ真似ると、中身のない断定になる。その場合は素の質問形に戻したほうが安全である。加点を狙って減点を食らうのは、面接において最も避けるべき失敗の形だ。

第二に、面接官の立場によって答えられる範囲が違う。10年後の方向性を問う質問は、現場の若手社員にとっては答えにくい場合がある。逆に、現場の細かい業務の性質を役員に聞いても、解像度の高い答えは返ってこないかもしれない。誰に何を聞くかは、相手の立場を見て選ぶ必要がある。

第三に、これは内定を目的関数に置いた場合の設計である。逆質問を自分の疑問を解消する時間として使うことにも、入社後のミスマッチを避けるという別の価値が確実に存在する。私はその価値を否定しない。ただ、内定を取るという一点で見るならば、逆質問は加点を取りにいく最後の持ち時間として設計したほうが合理的だ、というのが私の結論である。この二つの目的は、限られた持ち時間の中で完全には両立しない。どちらを優先するかは、自分で決めるしかない。


この記事を読む前と、読んだあと

読む前のあなた 「最後に質問はありますか」で聞くことがなく、とりあえず何かを聞いていた。志望度が低いと思われないための時間になっていた。

読んだあとのあなた 逆質問が面接で唯一、自分が話題を選べる時間だと分かっている。3点セットのうち、まだ証明できていない項目を自分から補強できる。

明日からやること

  • やめる: 「聞きたいこと」を探すこと
  • 始める: 「御社で一番優秀だと感じる方は、どんな特徴をお持ちですか」を一次面接で聞き、その答えを二次の仮説に使うこと
前の記事業界研究が先で、企業研究が後である — 順番には理由がある